超能力スパイをやっていた?
ゲラーにまつわる超常的なエピソードは、本人が各所で吹聴していることもあり、枚挙にいとまがない。そのため、ここからはよく話題になるものに絞って取り上げる。
まずは、超能力スパイをやっていたという話について。これは、ゲラーがアメリカの諜報機関に雇われ、超能力を使ったスパイ活動をしていたというもの。
一見すると突拍子もない話に思えるが、役に立ったかはともかく、超能力スパイというもの自体は実在していた。
では、ゲラーの場合はどうなのだろうか。この話は、『実録・アメリカ超能力部隊』という本の著者で、ジャーナリストのジョン・ロンスンが、ゲラーや諜報機関の幹部に取材している。
それによれば、まずゲラーは1970年代だけでなく、2000年代にも超能力スパイとして活動していたと主張したのだという。
ところが、この話をロンスンが調査してみると、裏付けとなる証言は信用できる第三者から得られなかったとしている。つまり、ゲラーの話は本人が吹聴しているだけの状況で、今のところ事実と考えることは難しいようだ。
なお、他の国のスパイだったという話もあるが、それらも残念ながら裏付けとなるようなものは見つかっていない。
科学的に超能力が認められた?
次に、SRIの実験について。これは実験者が描いた絵を、隔離された部屋にいるゲラーが透視したり、無作為に開いた辞書に載っている単語を当てたりすることなどが行われた実験である。
こうした実験はおおむね成功したとされ、その結果は『ネイチャー』誌に掲載。ゲラーの超能力は科学的に認められたと思われることもあるようだ。
しかし、実情はかなり違う。SRIの実験については心理学者のデイビッド・マークスとリチャード・カマン、それにマジシャンのジェイムズ・ランディが調査している。
彼らの調査によれば、SRIで行われた実験は相当にお粗末な内容だったという。
たとえば実験は、外部から完全に遮断された「シールド・ルーム」と呼ばれる部屋で行われたといわれていた。ところが、その部屋の壁には、コードを通すために約8センチの穴があいていた。さらにその上にはハーフ・ミラーの窓があり、室内には外と会話可能なインターホンまでついていたという。