昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

日本での民族差別を訴える「ナイキのCM」が魅せる面白さ、奥の深さと商売ゆえの欺瞞

2020/12/11

 先週、ナイキ(NIKE)が日本の民族問題に踏み込んで炎上した宣伝動画があるというので見物に行きました。

 最近、太り過ぎてしまったので持病と相談しながらジョギングを始めた私も、一緒によくお出かけをする拙宅三兄弟もナイキのシューズを愛用しています。子ども用にずっとダイナモを使い続けていたんですが、良い履き心地なのだそうです。

山本家の三兄弟が愛用している靴 ©山本一郎

 そんな愛するナイキがやらかしたというので、2分の動画をドキドキしながら見物したんですよ。日本人、どんなふうに悪く描かれているんだろうって。

 すでにあちこちで解説記事が出ているので詳細は触れませんが、要するに日本の学校生活で差別されている若い女の子三人組が、抑圧を跳ねのけてありのままの自分で活躍し、打ち込むサッカーで爽やかに汗を流す、というものです。

人種差別を真っ向から描いたナイキのCMは、なぜ作られたか
https://note.com/yumaendo/n/ne47e10c9dbc2

北朝鮮籍だと思われたくない、という気持ちそのものが差別意識

 中でも、我が国の民族右派の皆さまが気にしたのが、このキャスト三人のうち一人が朝鮮学校に通っている実在の北朝鮮系の女の子だったという点です。「山本」という通名を使い、周囲の差別の目線に苦しみながらも、自分を殺して愛するサッカーで頑張っている姿は立場の違いを超えて共感するものもあるはずなのですが、なんかこう、動画ではっきりと出てしまうと強く反発する人も少なくなく、見ようによっては酷い炎上をした格好になっています。

 同じ山本姓である私からしますと、まるで山本を名乗る人が北朝鮮籍を持つようで、いや違う、山本って名前を使わないでください、という想いが去来します。

 でも、これがある意味で日本人として日本社会に生きる私の、秘められた差別意識なのだと言われるとまあそうなんだろうなと思うわけですよ。つまり、北朝鮮籍だと思われたくない、という気持ちそのものが。

©iStock.com

 もっとも、朝鮮学校に通う女の子が実在である以上、そこに通う人たちから差別を受けることなどあり得ないし、そもそも民族衣装であるチマチョゴリを着て登校しておいて「私は他人とちょっと違う?」と疑問に思われても「おう、そりゃ違うだろうよ」と突っ込みのひとつも入れたくなります。

 ましてや、アフリカ系のルーツを持つ女の子とは違い、北朝鮮と我が国は戦後拉致問題を含めた浅からぬ因縁を持っています。過去に大きな事件や悲しい経緯があったからと言って、北朝鮮籍の子どもを差別して良いとはなりませんが、単に「いろんな民族の子どもたちが差別なく明るい学生生活を送れるといいね」という底抜けに明るいメッセージの題材にするには重すぎます。