MeToo運動を通じ、女性のセクハラ・性暴力被害が明るみに出ることが増えてきたものの、いまだに、男性に比べて女性は嫌がらせにあう機会が多いと言わざるを得ない。

 そんな現状の問題と、これからの時代を生きていくうえで知っておきたい「性」にまつわる知識をまとめた一冊が齋藤賢氏の著書『知らないと恥をかく「性」の新常識』である。ここでは、同書を引用し、現代に蔓延る男性の恥ずべき行為・意識について紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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上から目線のしょうもない意見

 マンスプレイニングという言葉がある。Man(男性)とexplain(説明する)を合成して作られた造語だ。この言葉はレベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』がきっかけとなって生まれた。この本の導入部に呆れてしまうエピソードが載っているので、言葉の説明は後にして、ここでそのエピソードを紹介しよう。

 彼女があるパーティーに参加した時のエピソードだ。彼女はその時すでに6、7冊の本を出している文筆家であった。その彼女が威圧的な感じの、大金持ちの男に話しかけられた。そして、その男は上から目線で何について書いているのか尋ねてきた。彼女は1冊の自著のタイトルを述べると、彼は、そのテーマについて重要な本があると言って、自己満足しきった表情で長話を続けたそうだ。彼は彼女にそのテーマに関して書かれた重要な本について教えようとしたのだ。しかし、この小話のオチは、男がいう重要な本とは彼女の本だったということだ。

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 このエピソードで描かれる現象こそマンスプレイニングだ。マンスプレイニングとは、男性が女性に説教(説明)してしまう現象を揶揄した言葉である。ソルニットによると、この言葉は「ニューヨーク・タイムズの2010年度の『今年の言葉』に選出され、2012年までには、メインストリームの政治紙でも使われるようになった」らしい(ちなみに彼女自身はこの言葉は個人的にしっくりこないので、あまり使わないとのこと)。

訳知り顔で聞いてもないアドバイスをしてくる人

 僕がこの言葉をはじめに聞いた時に思い出したのは、SNS上でよく目にする「ある意見」だ。それは、男性から女性のアクティビストに対して投げかけられる「それじゃダメだよ」という意見だ。女性のアクティビストが何か言うたび、何かやるたびに「それじゃダメだよ」の声が飛んでくる。もし、女性アクティビストがその人に対して何か実害を与えているなら、そうした批判をする権利はあるだろう。でも、言い方や、やり方のうまい・へたははっきり言って第三者には関係のないことである。それにもかかわらず、訳知り顔で聞いてもないアドバイスをしてくる人がいる。マンスプレイニングという言葉をはじめて聞いた時、僕の頭の中に浮かんだのはこうした人々だ。