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社会的ポジションを得ても嫌がらせの対象になる

 ここまでは僕の身近で生じている嫌がらせを取り上げたが、ひどい嫌がらせを受けるのはどうやら僕の周囲にいるような若い女性アクティビストだけではないようだ。弁護士や政治家の女性も嫌がらせを受けていることがニュースになった。2019年2月7日、頼んだ覚えがない商品が事務所などに送りつけられたとして、被害者グループが会見を行った。彼女たちは一緒に行動していて被害にあったのではなく、「2018年秋頃から被害者がそれぞれにFacebookやTwitterなどのSNSで被害を報告し合ったことで、同様の被害に気づき、被害者グループとして今回の会見を開くことになった」(*1)らしい。彼女たちはみな性暴力やジェンダー問題、その他の社会問題に積極的に発言している人たちだ。こうした事例を知ると、ある程度の社会的ポジションを得た女性でさえ、現状では嫌がらせの対象になってしまう。

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女性が声をあげる困難

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 前の節とこの節で、女性が声をあげると生じる困難を見てきた。最後に、インターネットがもたらした功罪について整理しておく必要があるだろう。インターネットの登場によって、いままで声をあげられなかった人々が声をあげられるようになったのは確かだし、いままでだったらかき消されてしまっていた声も反響し合って大音量になるようにもなった。しかし、インターネットには負の側面もある。そのひとつがサイバーハラスメントだ。ダニエル・キーツ・シトロンは『サイバーハラスメント』でサイバーハラスメントを次のようなものだと述べている。「サイバーハラスメントとは一般に、一度限りの事件ではなく『一連の行為』にまで至るほどに執拗なオンライン上の発言によって、相当程度の精神的苦痛を意図的に与えること、と理解されている」。そして、もう少し狭い意味の「サイバーストーキング」も含めてこう書く。「サイバーハラスメントは、暴力の脅迫、プライバシーの侵害、評判を害する嘘などを含み、被害者に身体的危害や技術的な攻撃を加えるよう呼びかけるものだ」(シトロン 2014=2020:10)。