白石被告の逮捕に協力した女性は後日自殺
被害者が自殺をしたいと思う理由は、他人から見れば「小さいこと」であっても、当事者からすれば、「死にたいと思うほどのこと」だ。いじめがあっても、教師の不適切な指導があっても、叱責や失恋があっても、それを我慢できる人もいれば、「死にたい」と思い詰める人もいる。その人の置かれた環境や、人間関係などによっても変化する。
ちなみに、事件の発覚と白石被告の逮捕に協力した女性(当時30)がいた。9人目の被害者Iさん(当時23、女性)の兄がTwitterで協力を呼びかけたことがきっかけだった。日本テレビの報道によると、この女性は事件発覚6日前、白石被告と町田駅近くのファミレスで会ったものの、白石被告のアパートには行かなかった。そして、この女性の協力で警視庁は囮捜査をした。JR町田駅で待ち合わせの約束をするが、ドタキャンとなるようなものだった。しかし、白石被告が逮捕された後、この女性は自殺している、という。
同じようなことは以前もあった。自殺系サイトを介して見知らぬ人と出会い、自殺をする「ネット心中」が知られるきっかけとなったのは、2003年2月11日。埼玉県入間市下藤沢のアパート内で、近くの無職男性(当時26)と千葉県船橋市の無職女性(当時24)、川崎市の無職女性(当時22)の3人が室内で死亡しているのが発見された。
119番通報をしたのは、栃木県に住む女子高生(当時17)。2002年12月ごろ、亡くなった3人とその女子高生はインターネットを通じて自殺計画のやり取りをしていた。「男性がインターネットで、この部屋で自殺する人を募っていた。しかし、連絡が途絶えたため心配になった」と警察に話した。女子高生は死亡した男性らと連絡が数日前から取れず、計画に上がっていた同アパートを訪れたところ、室内で人が倒れているのを見つけた。このときの女子高生ものちに自殺している。
「死にたい」気持ちは繰り返す
「ネット心中」をしようとして、一度は相手に会って、実際には心中をしない場合もあるが、だからといって、自殺をしない心情になっているわけではない。むしろ、選択肢の一つとして、リアルに自殺という手段が頭に残り、より心理的視野狭窄を強化していく場合もあるということを示している。自殺遺体の発見者、事件の目撃者は自殺リスクを高めるのかもしれない。そのため、協力者や目撃者のケアやサポートはしなければならないだろう。
つまり、「死にたい」気持ちは繰り返す。一度、自殺を止めたとしても、再度、「死にたい」気持ちが浮上する。もちろん、そんな浮き沈みは、家族だけで支えられるものではない。ある遺族の論告で「死ぬのはダメという前提のもとに話をしていても、だんだん面倒になることがあります。遺族はそうなっていました」と述べている。家族だけでなく、福祉や保健、医療、心理の専門的なサポートと、ボランティアなどのネットワークによって支えることが大切だ。「死にたい」気持ちの改善と、社会に対する信頼感を抱くようになる環境整備が必要ではないだろうか。
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