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宗教の世界へ
──大学では応用物理学を学び首席で卒業。総代で挨拶もしていますね。
「そういうことは聞きました」
──被告人は言わないのですか?
「家に帰って、記念品として時計を頂いたとだけ……」
──学校のこととか、本人があまり話さない?
「そうだったと思います。ですが、親として別に関心を持たない訳ではありませんでした」
そんな息子が、宗教の世界に関心を抱いていく。だが、親は一切そのことを関知していなかった。
──高校から瞑想修行をしていたことは?
「知りません」
──宗教への警戒心はありましたか。
「わかりません」
──昭和63年3月にオウムに入信した、そのことを知らなかった?
「はい」
──この年の秋には大手電器メーカーへの就職が内定しますね。
「会社から家へ内定の連絡があって、それで知りました。どう言っていたか、ちょっと記憶はありませんが、喜んでいたと思います」
──出家する、と両親に言ったのは?
「翌年、平成になってから、1月ではなかったかと思います。坊さんが出家するのと同じ、そんなことを言っていました。出家すると、7代家が栄えると、健一が言っていました」
──出家後の生活については?
「自由に勉強、研究ができると言っていました。それと、幼稚園、小、中、高校、大学と、理想郷を作ると、そう言っていました」
──理想郷を作る?
「はい。簡単にそういうものができるのかな、と思ったのを覚えています」
──納得したのですか。
「納得はしませんでした。本人がどうしても出家したいと言うので、それも仕方ないかな、と思ったのを覚えています」