廃ビルの模型の屋上で起きた“不可思議な惨劇”
「屋上からさ、小さな女子高生たちが出てきたんだよ」
ガチャ。
廃ビルの模型の屋上、そこに通じるドアから怯えて飛び出すように、制服を着て、手に小さな懐中電灯を持った女子高生たちが出てきたのだという。まさに半狂乱といった様子で、甲高く小さな、例えるならアニメに出てくる小動物のようなハイピッチな声で、
「イヤァァァァ!!」
「タスケテ……ダレカァーダレカァァァァァァァ!!」
「ヤダヤダヤダァ!!」
「ギャアァァァァァァァ!!」
と、絶叫しているのだという。まるで“何か”から逃げているかのように、一目散にビルの端の手すりにまで疾走した彼女たちは、身を寄せ合って泣き喚いている。
すると、突如として彼女たちは手すりを乗り越え、叫びながら廃ビルの屋上から次々と飛び降りてしまったのだそうだ。
ドチッ
ドチドチッ
ドチッ
これが本物のビルだったら絶対に助からない……そんな高さから飛び降りた小さな彼女たちの周囲に赤い斑点が広がり始め、寝室はシン……と静まり返った。
Sさんの父親があっけにとられていると、ギギッと屋上に通じるドアが開いた。
そこから屈むようにして出てきたのは、先ほどの彼女たちと比べると明らかに“寸尺のおかしい髪の長い女”だったそうだ。
「仮にミニチュアサイズじゃなかったらさ……多分3m近くあるんだよ。ありえないだろ人間で、そのサイズ。手足もさ、なんか、長いっていうか、おかしいんだよ……」
歩く歩幅と進む速度がズレているような、そんな奇妙な動きで、その女は手すりのそばまで歩いて行くと、ビルの下の彼女たちを覗き込むように屈み込む。
「アハッ! アハハハアハハアハハハ!!」
と、ハイピッチな小さな声で不気味に笑い出し、またゆら〜ゆら〜っとした奇妙な動きでドアに向かって歩き出し、バタンッとドアを閉めて消えてしまったのだという。
そこでSさんの父はふと我に返り、この奇妙な光景が幻か何かであることを確かめようと、振り返って寝入る妻に声をかけた。
「おい……起きろって、これ、なんだこれ……」
しかし、妻は不自然なほど規則的に寝息を立て、一向に起きる気配がない。
ガチャ。