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ドサッ。
俺の娘が……。そんなイヤな実感が爪先から頭までズゥゥッ……と駆け上がってきた。
ガチャ。
“寸尺のおかしい女”はまたしても現れ、手すりの下を覗き込み、不気味な口をカパッと開けて笑い出す。
「アハッ! アハハハアハハアハハハハ!!」
その笑い声もまた、ミニチュアサイズのものではなかった。
すると、背後でズササッ……ッと、シーツの擦れる音が聞こえた。
妻が起きたのか? そう思った次の瞬間、耳元でドロッとした低く唸るような男の……、
「はちがつ よっか よるの できごとです」
という声がし、Sさんの父親はそこでプッツリと意識を失ってしまったのだという。
8月4日、夜の出来事です――それは今日のこと
朝、Sさんの父親が汗だくで目を覚ますと、そこにあの模型はなかった。安堵してサイドテーブルにあるスマホを起動させると、「8月4日」の文字が浮かび上がった。
「だから、今、起こしたんだよ……あそこ、行く気だったろお前。絶対行くな……死ぬぞ」
Sさんは友人たちにLINEで謝り、肝試しを取りやめにしたという。
その後、一家は北九州に引っ越し、そこでかぁなっき氏と知り合い、この話を氏に提供してくれたのだそうだ。
余談だが、その廃ビルは、今も取り壊されることなくその場所にあるという。