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 背後でまた音が聞こえた。振り返ると、依然その廃ビルの模型はベッド脇に鎮座している。

「イヤァァァァァ!!」

「タスケテ……ダレカァーダレカァァァァァァァ!!」

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「ヤダヤダヤダァ!!」

「ギャアアアアアア!!」

 ドチッ

 ドチドチッ

 ドチッ

 再び繰り返される不気味な光景。

©iStock.com

 そして、その“寸尺のおかしい女”もまた、同じように現れ、同じように「アハッ! アハハハアハハアハハハハ!!」と高笑いをし、ドアの向こうに消えていく。

 バタンッ。

 ドアが閉まった瞬間、Sさんの父親の心には言い知れぬ“焦り”、まるで自宅のガス栓を開けたまま出てきてしまったかのような、逃げ出したくなる“イヤな予感”がこみ上げてきた。

 ガチャ。

 開け放たれるドア。繰り返される惨劇。消えない模型。

 4回か5回か、それが繰り返されたとき、Sさんの父親はあることに気がついた。

「イヤァァァァァ!!」

「タスケテ……ダレカァーダレカァァァァァァ!!」

「やだやだやだぁ!!」

「ギャアァァァァァァ!!」

 小さな女子高生たちの一人が、これまでのハイピッチなミニチュア声ではないのだ。

 自分の娘の叫び声なのだ。

「いやだぁ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁ――」