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伝説のホスト ローランドが明かす「女の子と話せなかった新人時代」を支えた“劣等感と反骨心”

ローランドさんインタビュー #2

2020/12/27
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 人生を変えたくて歌舞伎町へ入ったのに、伝説のホストになるどころか、女の子とまともな会話すらできない。「このままではいたくない」と焦ったローランドは、古本屋へ向かった。そしてなけなしの収入の中から自己啓発本をはじめ様々な本を読み漁り、ファッションやカルチャーに至るまで、一心不乱に学んだ。そうしてトークのスキルを磨いたのだ。

20歳にして代表取締役に就任

 その効果はすぐに現れた。1ヶ月もすると女の子の存在にも慣れ、「調子どう」と軽口も自然に言えるようになった。共学校でモテ続けた男なら感覚的にできるようなことも、「それこそ『このタイミングでスキンシップだな』とか、知識を取り入れて科学的にアプローチするわけですよ(笑)」。そうやって、ローランドのホストとしてのスタイルは確立されていった。

 ただ、他の従業員とはあまりうまく行かなかったという。「だって僕は『伝説のホストになりたい』なんて初日に言ってしまう、生意気な新人だったわけで。小さい店だったから他のホストとの温度差がすごくて、僕から見たら適当に仕事をしているような、プロ意識の低い先輩に媚を売る気にはなれなかったんですよね」

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 サッカーで培ったストイックさと、サッカーを失って手に入れた反骨心。その二つを原動力に変えたローランドは、本当の意味で“無敵”だった。彼はあっという間にナンバーワンになり、20歳にして代表取締役に就任した。

 翌年には歌舞伎町史上最高額で大型有名店へ移籍。そこでも月間6000万円という、店舗での個人売上最高額を記録して、名実ともに歌舞伎町ナンバーワンホストになるのだ。

大雪の成人式で八王子に“凱旋”

 初めてナンバーワンをとり、自身の店のオーナーとなった直後の年明け、ローランドは成人式で地元・八王子へ“凱旋”した。

「地元のみんなにもサッカーでプロになるって啖呵を切って、15で八王子を離れて寮に入ったわけじゃないですか。田舎のコミュニティは狭いから、あいつはプロを目指しているらしいぞとすぐに広まって。その中で結局プロになれず、レギュラーにもなれず失意のどん底にいて、凄い劣等感で合わせる顔もなかったわけです。それを変えたくて歌舞伎町に行って、遂には一番を取れた。だから、やっぱり自分のコンプレックスや劣等感というのをここで晴らしたい、みたいな気持ちはすごくあったんですよ」

 

 地元の成人式は、特に“男の子”には重大な意味があったと語る。「八王子っていい意味でも悪い意味でもタフでハングリーな街で、男が成功することに対しての憧れがすごくあるんですね。成人式では、もう人生の晴れ舞台と言わんばかりの髪型したりとか、その日のために命かけて車を改造したりとか。10年もして振り返ったら、本当にバカだなって思うかもしれないですけど、特に男の子はね、そこでしっかりカッコよく帰れるかって、一種のステータスなわけですよ」

 成人式の日、天気は大雪だった。「その日のことはすごく覚えていますね。白いスーツを着て行って、白のハットかぶって、財布に100万円かなんか入れて。いま考えたら、ほんとやめとけよお前、恥ずかしいからさ、って止めるかもしれないですけど。でもあのときがあったから、また少し自分のことを肯定できたというか、みんなにも証明できて。でも一番は、自分自身に証明したかったんだと思うんです」