うつ病になって将棋が指せなくなり、休場を余儀なくされたプロ棋士の先崎学九段。“うつ”との壮絶な闘いを綴った手記『うつ病九段』はベストセラーになりました。

 このたび、安田顕主演でドラマ化され、12月20日午後9時よりNHK BSプレミアムで放送されます。ナイツの土屋伸之が羽生善治を、鈴木福が藤井聡太を演じるという異色のキャスティングも注目です。放送に先立ち、漫画家・河井克夫によるコミック版から内容をご紹介します。

 

誕生日の翌日に異変が起きた

朝起きると、体に異変を感じた……。©先崎学/河井克夫/文藝春秋

 プロ棋士の先崎学九段を“うつ”が襲ったのは、47歳の誕生日の翌日でした。頭がどんよりと重く、将棋を指しても対局にまったく集中できません。

ADVERTISEMENT

対局中、思考が全然まとまらず、ふらっと指してしまう。©先崎学/河井克夫/文藝春秋

 それでも休めばなんとかなる、と考えるものの、日に日に眠れなくなり、得体のしれない大きな不安が彼を襲います。そのうち、1日のうち何度も電車に飛び込む自分の姿が脳裏をよぎるようになります。

毎日、何十回も電車に飛び込むイメージが頭の中を駆け巡る。©先崎学/河井克夫/文藝春秋

 ちょうどその頃、14歳の藤井聡太四段(当時)がプロデビューから29連勝を達成し、「藤井フィーバー」が始まっていました。将棋界が注目を集めるなか、「それにひきかえ、俺は……」と落ち込む先崎九段でした。

先崎九段がうつ病になったのは、まさに藤井フィーバーで世間が湧いている頃だった。©先崎学/河井克夫/文藝春秋

精神科医の兄からのアドバイス

 明らかに様子がおかしくなった夫を心配して、奥さんは先崎さんの兄を呼びます。お兄さんは優秀な精神科医でした。

「学、入院するんだ。このままでは自殺の恐れがある」

見かねた精神科医の兄は、先崎に入院を強く勧めた。©先崎学/河井克夫/文藝春秋

 精神科医の兄からのアドバイスによって、先崎さんは慶応病院への入院を決意します。

ついに先崎は入院を決意する。©先崎学/河井克夫/文藝春秋