2020年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。トラベル部門の第5位は、こちら!(初公開日 2020年5月22日)。

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 西武新宿線所沢駅の西口を出て、すぐ右側の「プロペ商店街」を直進。交差する昭和通りを進んで「ファルマン通り」交差点を越え、最初の路地を右に入ると、すぐ左側に真っ赤な日よけ看板が現れる。

 赤地に「中華料理」と白抜きされた暖簾も、「サッポロラーメン 御食事」と書かれた白地の看板も、年季の入りまくった建物自体も、すべてが昭和そのもの。

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 予想どおり、“アタリ”だなと感じた。これぞ、まさしくB中華。

 

20年以上前から気になっていた“渋い看板”

 訪れたのは、今回が初めてだ。しかし、実はもう20年以上前から気になっていたのだった。埼玉西部にある妻の実家からの帰り道に、車でファルマン通り交差点を通り過ぎる際、「中華料理」という看板がチラッと見えていたからだ。

 その渋すぎる映像が頭から離れなかったため、いいかげん足を運んでみなければいけないと思い立ち、車ではなく西武線に乗って訪ねてみたのだ。

 
 

 3月中旬のことである。そののち新型コロナ騒動が予想以上に大きくなり、スケジュール変更などの雑事に追われているうちに時間が経過してしまったのだった。だが、やがて緊急事態宣言が発令されたので、あのタイミングを逃していたとしたら、かなり先まで行けなかったかもしれない。

平日の午後3時に訪れてみると……

 いずれにしても、二十数年も抱え込んできた思いを胸に抱いての訪問。気持ちが昂らないわけがない。

 

 とはいえ所沢の路地裏に佇む地味な店であり、しかも平日の午後3時近くだ。昼休みを入れず通しで営業しているようだが、「開店休業状態かもしれないなぁ」と思いながら引き戸を開けた。

 驚いたのは、そんな予測が見事に外れたからである。右に2つ、左に2つ、計4つあるテーブル席にはそれぞれ一人客が座っていて、つまりすべてのテーブルが埋まっていたのだ。