片岡鶴太郎さんに「ほんとに憎らしかった」と言われて
ーーきっとそこにいたみなさんが芸人になろうと思った時、山田邦子さんの存在は確実にあったと思うんですよ。「天下を取った唯一の女性芸人」と言われた方ですから。
山田 でも私、師匠もなく、スクールに行ったわけでもなく、ポッと出なんですよ。ほんとミーハーで。「あったけし、たけし」みたいな(笑)。基本、勘違い。だからやりづらかったと思いますよ、周りの芸人は。3年ぐらい経ってから鶴太郎さんに「ほんとに憎らしかった」と言われました(笑)。何もわかってなかったから。
ーー芸人のしきたりとか?
山田 そうそう。NG出しても「間違えた~」ってゲラゲラ笑ってるし。「この野郎って何回も思ったよ」って言われて(笑)。まぁ鶴ちゃん邦ちゃんはね、すごく仲がいいですから。
私は全然何も考えてなくて、素人の番組にちょろちょろ出ていたら、横澤彪さんというプロデューサーに「『ひょうきん族』がレギュラーになるけど出ない?」って声をかけられて。まだ自宅から仕事場に通っていた時で、太田プロにも入ってなかった。マネージャーもいないから自分でスケジュール帳なんか見ちゃって、「えーと、空いてます」とか言って(笑)。図々しいですよね。
ーーフワちゃん的な。
山田 フワちゃんって、チャーミングよね~。一人でやってるって言ってて、あぁ頑張ってるんだなと。私が「フワちゃん」って言ったら、「山田邦子!」って言うの(笑)。「邦子、なぁ邦子」って。
ーーそれも「あったけし、たけし」に近い(笑)。
山田 おまえよ~って(笑)。でもかわいいなと思いましたね。
「女」とか「男」とかあんまり考えていなかった
ーー今の女性芸人にとっては山田邦子さんがロールモデルとしてあると思いますが、山田さんご自身はいかがでしたか。目標みたいな存在は。
山田 うん……私ね、あんまり「女」とか「男」とか思ってなかったから、よかったのかもしれない。自分は女だからとか、考え方として分けていなかったんです。同業者として、男の中に入っていると思っていた。
ーー当時は男女雇用機会均等法が制定されたり、社会的にも男女平等の機運が高まっていたと思います。山田さんも男性と同じくらい評価されたいとか、そういう気持ちは?
山田 どうかなぁ……。私『野々村病院物語』というドラマでデビューしたんですけど、その時はまだ勘違いしてまして。共演者にあの夏目雅子さんがいて、なんとなく夏目雅子さんの気分のところはありました(笑)。徐々に「あれっどうやら違うな」って気づいて、面白いとこに呼ばれるようになって。
「あっそうだ、私“面白い”担当してるんだな」って考えるようになってからは、だいぶ稼ぎやすくなったと思います。そうか、自分はアイドルでも女優でもないんだと。それで『ひょうきん族』が始まりました。