今年9月、杉田水脈衆議院議員が、性暴力被害の相談事業について語るなかで、「女性はいくらでも嘘をつけますから」と発言し、物議をかもした。その後、杉田氏は「女性のみが嘘をつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった」と謝罪している。

杉田水脈衆議院議員

 当然ながら、性別と嘘には何ら関わりはない。しかし、近代の日本では特に「女性犯罪論」において、「女は嘘つきである」ということが繰り返し唱えられていた。

「月経時に虚言が現れる」

 日本で最初の犯罪心理学者と言われている寺田精一は、著書『婦人と犯罪』(1916年/大正5年)の「月経と心的異常と犯罪」の項において、「ロンブローゾは(月経時に)憤怒と虚言が現れると説いている」と述べている。

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 ロンブローゾは19世紀後半に活躍したイタリアの犯罪人類学者で、「犯罪者の多くは隔世遺伝によって生来的に犯罪的素質を持っている」という「生来性犯罪者説」を唱えたことで有名だが、女性犯罪論も執筆している。

 彼は女性全般の精神的特徴として、冷酷、短気、不道徳、不誠実、復讐心や虚栄心の強さなどを挙げ、これらは通常、母性、同情心、低い知性、弱さなどによって「中和」されているが、もし「中和」されずに犯罪者となった場合、その犯罪行為は男性犯罪者とは比較にならないほど悪魔的で、殺人を犯す場合にも、被害者が苦しむ過程をたっぷりと味わうと説いた。

 そして、「公務執行妨害」で現行犯逮捕された80人の女性のうち71人が月経時であったという自らが見聞した数値と、フランスの医師ルグラン・デュ・ソールが報告した、パリで行われた56件の女性による万引きのうち35件が月経時であったという数値を示し、「犯罪における月経要因説」を女性犯罪論の一大テーマとして位置づけた。

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 ロンブローゾの主張は明治期の日本に移入され、特に“月経が精神に与える影響”について説いた箇所は、女学校などで性別役割分業を説く際に利用された。