――エスター・ワンブイ選手について、「全国高校駅伝に出場できない20歳ではないか」という情報があります。世界陸連のサイトを見ても、たしかに生年月日が2000年5月8日と書いてあります。藤井監督はどのように認識されていますでしょうか。
「エスターに年齢詐称の話が持ち上がっていることは聞いていました。ただこれは本当に根も葉もない話で、本人も戸惑っていましたが『堂々としていればいい』と伝えました。生徒たちは普段から厳しい練習をして大会に向かっているので、競技以外のことでまでしんどい思いはさせたくないんです。
ワールドアスレティックスに登録されている生年月日が2000年なのは承知しています。でも、この書類を見てください。真実がわかりますから」
「私は17歳です」
監督がそう言って差し出したのは、ワンブイ選手のパスポート、在留カード、出生証明書のコピーだった。本人の同意を得てすべての書類を確認すると、どの書類にも彼女の生年月日は「2003年5月8日」と記されていた。藤井監督は、ワンブイ選手の年齢について、来日した経緯から丁寧に説明してくれた。
「2018年に、ケニアの選手を紹介してくれるエージェントから、『将来が楽しみな選手がいる』と聞いたのが出会いでした。しかし、彼女のパスポートを確認したら当時はまだ14歳。それで1年待って、彼女が15歳になったタイミングで私がケニアのエスターの家まで行きました。そこで本人と両親と話して、興譲館に来てくれないかと誘いました。
年齢を含めて不正があってはいけないので、当時の時点ですべての書類を精査して確認しています。今の時代、不正をして試合に出ても絶対に後で発覚しますから」
同席してくれたワンブイ選手本人も、次のように語った。
「私は17歳です。20歳ではないです。ワールドアスレティックスにはマラソンのタイムが私のものとして記録されていますが、私はマラソンは走ったこともありません。ジュニアハイスクールで走ったのは200m、400m、800mだけ。日本の冬は寒いですが練習と試合が楽しいです」