体格はたしかに大きく手足も長いが、時折見せる表情にはあどけなさも漂わせていた。藤井監督はワンブイ選手について「全面的に信頼している」と話す。
「エスターは人に気が遣える、優しい子です。音楽が好きで、日本人みたいな魂を持っていて何事にも諦めず、日本に来てから心の部分もすごく成長してくれました。チームメイトが調子を落として悩んでいたら、寄り添って支えようとする性格で、走りだけじゃなく精神的にもチームの支えです。
来日2年目ですが、日本語での会話もできるようになりました。ケニアから慣れない環境に来て、毎日努力している姿を私は見ています。本人も本当にショックを受けています。このようなことは二度と起きてほしくありません」
取材後、興譲館高校から岡山高体連、日本陸連を通じて世界陸連に問い合わせたところ、ワールドアスレティックスに登録されていたワンブイ選手の生年月日は「2003年5月8日」に修正された。もちろん全国高校駅伝の出場資格は満たしている。
世界陸連のサイトの情報がなぜ違った?
「これにて一件落着」と言いたいところではあるが、そもそもなぜ、「世界陸連の選手情報ページ」という極めて公式度の高い情報に杜撰な間違いがあったのだろうか。日本陸連に、世界陸連の選手ページの情報の由来や修正の経緯を問い合わせると、回答があった。
「WA(世界陸連)のサイトに掲載されているエスター・ワンブイさんの選手情報の修正は、本連盟からWAに依頼したことによってなされましたので、本連盟でも把握しております。
2020年11月30日に岡山県高体連より本連盟に、WAのサイトに掲載されているエスターさんの生年月日に誤りがあるので修正してほしい、という旨のご連絡がありました。パスポートや在留資格が確認できる書類も提出してもらい、同日に本連盟から WA に修正を依頼したところ、同日17:50(日本時間)にWAから修正した旨の返答がありました」
世界陸連のサイトに掲載している選手の情報について、ワンブイ選手本人も、彼女が所属する興譲館高校も、「登録した記憶はない」と話していた。それではあの情報は、一体誰が登録したものなのか。選手の登録や情報の仕組みについて、日本陸連の担当者はこう説明する。