「岡山の超名門高校の女子駅伝部に、年齢詐称疑惑があります。今年も県予選を突破して、12月の全国高校駅伝に出場を決めた興譲館高校陸上部エースのケニア人留学生です。高校2年生で登録されていますが、20歳の疑いがある。実力的に日本人の高校生とは勝負にならず、実業団のトップレベルで通用する選手です」
11月下旬、「文春オンライン」に寄せられたその情報は耳を疑うものだった。
創立167年を誇る私立・興譲館高校は岡山でダントツの超名門校で、女子陸上部は岡山県大会を22連覇中。過去には2度全国制覇も成し遂げ、もちろん今年12月の全国大会にも出場する。過去には、10000mとハーフマラソンの日本記録を更新して東京オリンピックにも内定した新谷仁美選手(32)を筆頭に、重友梨佐(33)や小原怜(30)など錚々たるメンバーを輩出している。
昨年も全国で10人抜き
そんな「超名門校」で持ち上がった疑惑の対象は、ケニア出身の2年生ワングイ・エスター・ワンブイ選手。今年の岡山大会ではアンカーの5km区間を任され、日本人選手の最高記録が18分57秒だった同区間を、15分19秒で走り、優勝を大きく引き寄せた。昨年の全国大会にも2区で出場し、1年生ながら驚異的なスピードで10人抜きを見せている。
取材を進めていくと、疑惑の発端はワールドアスレティックス(WA・通称世界陸連)のワンブイ選手の個人ページにあることが判明した。取材を開始した11月25日の時点で、世界陸連の公式サイトにワンブイ選手は「2000年5月8日生まれ」と明記されていたのだ。
世界陸連は、世界212の国と地域の団体が加盟する陸上界の最高権威機関である。その公式サイトに記されていた誕生日から計算すると、ワンブイ選手の年齢は20歳ということに。記録欄には2019年8月7日に走った800m走や、2020年9月12日の3000mなど、たしかに「興譲館のワンブイ選手」が記録したタイムが掲載されている。