しかし全国高等学校駅伝競走大会の参加資格は《平成13年4月2日以降に生まれた者》である。平成13年は2001年なので、2000年5月8日生まれのワンブイ選手は参加資格がないことになる。この年代での1年の差は極めて大きく、もしワンブイ選手が本当に20歳ならば、全国を目指して努力してきた他校の選手たちが不当なハンデを背負わされていたことにもなりかねない。
高校スポーツ界で留学生の登録年齢が実際の年齢と異なることは過去にも例があり、2004年には男子バスケットのインターハイで優勝した福岡第一高が、主力セネガル人選手の年齢詐称が発覚して優勝を取り消されている。
高校駅伝界でも上位校は軒並み留学生を招聘するようになっているが、年齢詐称が明らかになったケースは過去にない。
遠目でも際立つ存在感と体格
取材班は真相を確かめるために岡山県へ向かった。
JR岡山駅から電車で約1時間ほどの井原駅。そこから20分ほど歩くと、興譲館高校が見えてきた。周囲を山々に囲まれ、校舎周辺には武道場、体育館が建ち、広大な野球部のグラウンドの周囲には陸上部のトラックが設置されている。
そのグラウンドに隣接して、女子陸上競技部の寮が建っている。授業が終わると制服を着た部員たちが小走りで寮へ一度戻り、すぐにジャージに着替えるとグラウンドへ向かい、全員で練習場の雑草を刈り取った後に練習が始まる。
ワンブイ選手は、その中心にジャージにニット帽姿で立っていた。他の選手に比べて一回り体が大きく、遠目にも一目でわかる存在感を発揮している。部の練習が終了したあとも、日が暮れて真っ暗になるまでトラックを走り続けていた。
11月27日の練習前、女子駅伝部を率いる藤井裕也監督に、エスター・ワンブイ選手に持ち上がっている年齢詐称疑惑について直撃した。