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苗字をもう変えたくない…バツイチアラフォー女性が再婚相手に出した「条件」

2020/12/20
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 選択的夫婦別姓の現状や、世の中の理解が進んでいる状況も丁寧に説明してみたが、母親から返ってきたのは「それはあなたが実践するんじゃなくて、それを進めてくれる政治家に票を入れて、実現したらやればいいんじゃない」という言葉だった。

©️iStock.com

 さらに輪をかけて猛反対をしたのが、相手側の実家だ。

「夫の実家は母親だけなんですが、そういうことを言い出したこと自体が引っ掛かったようで、わだかまりができちゃいました。とにかく“アナタの感じが悪い”という印象を持たれて、話し合いにすらならなかった。『こんな失礼な話はないし、だったら結婚しない方がいい』『アナタどういう人なの。しかもバツイチみたいだけど』みたいな反応でした。

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 私も『そこまで籍を入れたいわけじゃなくて、本当なら事実婚にしたい。でもあなたの息子さんが籍は入れたいというので話し合って決めたんです』と説明しましたけど、今度は事実婚にもピンとこなくて『どういうこと?』って」

「事後報告」で強行突破

 想像するだに面倒そうな状況だが、ここまで来ると、「もう面倒だから姓を変えて入籍にしよう」とは思わなかったのだろうか?

「思わない(笑)。意識高いとか言われそうだけど、これでこれまでみんなが折れてきたんでしょう。それで日本の婚姻制度が変わらないできちゃったのなら、マジで加担したくなかった。まあ、結婚自体はしちゃってるんですけど」

 結局、家族への説得は失敗に終わるのだが、二人は「事後報告」で強行突破を図ったという。

「当然、怒られたわけですけど、今さら取り消すことはできません。どうしても元に戻させたいのならもう離婚するしかない。私も夫のお母さんに責められて、『じゃあ離婚します』って半分本気で言いましたが、『そこまではしなくても』という感じで渋々受け入れてもらいました」

「手続きが大変だ」「家が遠くなった」という不満は言わない

 現在、佐藤さん夫婦は穏やかに暮らしているという。お互い仕事を続けながら、購入した家のローンも折半で支払っている。入籍する前に二人で決めたのは、お互いが条件にした「手続きが大変だ」「家が遠くなった」という不満は言わないようにすること。そのためパートナーから姓を変えた苦労は詳しくは聞いていないが、どうやら会社では「婿に入ったわけじゃないし、そんな深い意味はないよ」と押し切っているそうだ。

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「周囲にこの話をするときは冗談っぽく言ってましたけど、我ながら、意外と頑張りましたね。熟考して、根気強く説明して、相手の理解を得て、ダメならあとは自分の責任で決める。結構、大変な戦いでした」

苗字をもう変えたくない…バツイチアラフォー女性が再婚相手に出した「条件」

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