覚醒剤の所持容疑で逮捕されたのは、小さな町の小学校の校長先生だった。のどかな自然の中で「子どもは地域の宝・元気の源」の合い言葉を掲げ、日々子どもたちと向き合ってきたはずの先生に、何があったのか。
12月12日、日本海に面した兵庫県北部・香美町の町立香住小学校校長、楠田千晴容疑者(54)が覚醒剤取締法違反容疑で兵庫県警尼崎南警察署に逮捕された。
「楠田容疑者が覚醒剤を買ったという情報があり、家宅捜索をしたところ、自宅にあったカバンの中から粉が入った小さなポリ袋が出てきた。中身が覚醒剤だった」(尼崎南警察署幹部)
楠田容疑者の自宅は、勤務地に隣接する同県新温泉町の中心部にある。2人の子どもは巣立ち、今は妻と母親の3人暮らしだったという。この日、3階建ての住宅前に捜査員が次々と車で乗り付けたのは、まだあたりも薄暗い午前6時ごろだった。令状を示し、捜索を始めた捜査員らはすぐにカバンの中からパケ(ポリ袋)を見つけた。中身を調べたところ、簡易キットによる検査が示したのは覚醒剤の陽性反応だった。
別件逮捕の密売人のスマホ履歴から……
「覚醒剤で間違いないな」
午前7時前、現行犯逮捕された楠田容疑者は捜査員に問われ、「私が自分で使うために持っていました」と話したという。
兵庫県警の捜査関係者が説明する。
「尼崎南警察署が捜査を続けていた別の薬物事件で逮捕した密売人のスマートフォンを調べたところ、何人かと売買のやり取りをしていた履歴が残っていた。その1人が楠田容疑者だった。校長先生だと分かり、こちらもびっくりした。使用頻度や詳しい入手経路も当然調べます」
香美町や新温泉町は夏の海水浴と冬のカニが有名なのどかな町だ。外からの移住者はほとんどおらず、濃密な地域のつながりが残る。