「(冬に入って感染者数が増加した)もっとも重要な要因は、『人と人の距離が近くなった』からではないかと、私は考えています。寒いので外に出る機会が減って室内で過ごすことが増えたため、周囲の人との距離が近くなった。それが今回の感染拡大の一因ではないでしょうか。人と人との距離が短くなり、接触頻度が高まることによって、感染が拡大していく。これは感染症の基本中の基本です。気温は人の行動に変化を及ぼします」
「文藝春秋」1月号のインタビューでこう語るのは、国際医療福祉大学大学院教授の和田耕治氏だ。
和田氏は2020年2月に横浜港へ入港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」船内で、新型コロナウイルス集団感染対策にあたった経験を持ち、厚生労働省クラスター対策班(現・疫学データ班)メンバーとして政府の対策作りにも関わった。
インフルエンザは年末年始の帰省で広まっていた?
「接触頻度という点については、インフルエンザの感染状況が参考になります。例年、日本では、12月ごろまで、インフルエンザ感染の中心は子供となっています。元々子供はインフルエンザに対する抗体が十分ではなく、学校という同じ空間で長時間過ごすので、感染が広まりやすい。ところが年が明けると、感染者の中心は大人や高齢者に移るのです。これには年末年始の帰省が大きく関係しています。多くの人たちが、すし詰めの新幹線や飛行機に乗って、郷里のおじいちゃん、おばあちゃんへ会いにいく。子、親、祖父母の世代が一緒に過ごす時間が増えることで、感染の年代が広がっていくわけです。
つまり感染症の流行には、それぞれの国の文化・慣習が関係していると言えるのです。
その意味でも今年の冬は特別なのです。この季節は忘年会、帰省、初詣といった、日本の文化・慣習に根差したイベントが数多くあります。それらが原因で感染が拡大し、医療体制が危機に瀕したりしたら、来年、再来年の年末年始の過ごし方を変えなければいけなくなるかもしれません」
国内の新型コロナ感染者数は、連日のように最高値を更新し続けている。私たちは職場や家庭、飲食店などで、どのような点に気をつけて過ごせばよいのだろう。