声優の仕事は、いい声の人たちばかりで成り立ってはいない
――そこが個性となって、得難い存在の声優になれると。
島本 声優の仕事って、いい声の人たちばかりで成り立っているわけではなくて、ちゃんと脇をしっかり固めてくれる素敵な人もいるからこそ、みんなの力が合わさってひとつの作品が出来上がる。
自分の声と感覚に合ったお芝居をしている声優さんやキャラクターを見つけたら、その人について調べて取り込めるものをどんどん取り込んでいく、そして、その人の後進的存在になることのほうが、声優になれる、声優としてやっていくことの近道になるんだよって指導はするんですけどね……あまりピンとこないみたい。
素敵なサブキャラクター、それを演じられる人って、やっぱり必要とされているんです。そういう人は主役からサブキャラに落ちたんじゃなくて、最初からしっかりとサブキャラができる人。サブキャラをやっていた人が、作品の“芯”になれることもありますから。
声も大事だけど、それだけじゃない
――声優志望者も職業としての声優というより、スターとしての声優に目が向いている、業界としてもそこを推進しているところがある、という感じなのですかね。
島本 それはありますね。「水樹奈々さんに憧れています」と言われて、「歌は上手?」と訊くと「歌は下手ですね」「それじゃ、駄目じゃん」って。水樹さんを目指して歌を頑張っているわけでもなく、紅白に出たとか歌が上手いとか水樹さんのアイドル性に憧れているだけで終わっちゃっている。声を作って演じているアイドルが声優みたいな捉え方。
もちろん声は大事ですけど、読解力なども大事なんです。だけど、台本をそんなには読み込まず、とりあえず映像に合わせるみたいな感覚になっている。でも、現場にいくと絵に色がまったく付いていない状態だったり、絵が動かない状態だったりすることもあるんですね。
そうなると台本を読んで頭の中で映像を動かさなきゃいけないのに、動かせないから演じられなくなっちゃう。もちろん、若い方で上手な人もいっぱいいます。いま、30代以上で生き残っている人たちは頑張ってきた方々だと思います。