昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/01/08

「再開後、嬉しいことがあったんです。いつもは土日にいらっしゃるお客さんが、平日にもかかわらず一斉に駆けつけてくれて『ああ、開いてた。店がちゃんとあった~』、『こちらのそばが食べたかった~』、『あの冷麦が食べたかったんだ~』とおいしそうに召し上がってくださったんです。涙が出そうになりました。いや出ましたよ」

 コロナによって在宅勤務になった方たちが、平日に買い物がてら食べに来てくれたというわけである。

 ショッピングモールに来るお客さんは、「買い物のついでに」フードコートで食べていこうと考える。そんな時、期待しないで食べたそばが予想以上にうまいと、それはある意味、小さな驚きというわけである。

 フードコートでは店とお客さんとのつながりは薄いように思える。しかし、こうした場所であっても、うまいそばを通したお客さんとのつながりが大切であるという、いわば商売の鉄則を実感した瞬間だったという。

「自家製生冷麦」(400円)を食べていたら、行列ができ始めた

 そして、今年の「自家製生冷麦」(400円)は作り方を変えてすごくおいしいので、是非食べてくださいと松本さんに促されたので、追加でいただくことにした。

今年の「自家製生冷麦」(400円)はおすすめとか

 大きめの木桶に氷と冷たい水で〆た冷麦が入り登場した。つゆはイリコ、利尻昆布、それと鰺のアタマの部分を焼いた鰺節を使用し、関西風の薄口醤油で返しを併せている。薬味のしょうが、大葉、ねぎを入れてさっそく食べてみる。この生冷麦はコシが素晴らしく、冷たくのど越しもたまらない。そんな話をしていたら、お店の前には行列ができ始めていた。さすが人気店である。

大きめの木桶に氷と冷たい水で〆た生冷麦
つゆはイリコ、利尻昆布、それと鰺のアタマの部分を焼いた鰺節を使用し、関西風の薄口醤油で返しを併せている

 松本さんは前回取材した「丹沢そば本店」の石井勝孝さん同様、一見ふつうのおじさん(すいません)なのだが、明るくアクティブでへこたれず、洞察力が鋭く、廻りをよく観察し、決断がはやい。しかも、お客さん目線で考え対応している。