小池百合子の「3つの密を避けて行動を」に苦り切った不動産業界
当初は中国の武漢市で起こった風土病のようなものだろうとみんなが思った。だいたい武漢なんて多くの日本人は行ったこともないし、中国大陸の奥地。日本になんてやってくるわけがない。だが中国と日本は今の時代あらゆる面でつながっている。この感染症は2月、3月と時が進むにしたがって国内でも次第にその姿を現すようになった。
“If it can happen, it will happen” 「起こる可能性のあるものはいつか実際に起こる」
東京五輪開催を前に「嫌な情報」で世界に不安を与えたくない、中国習近平国家主席の来日を控え、中国からの観光客の訪日を止めたくないとの「想い」から、政府は及び腰の対応を続ける。だが、欧米各国からの感染状況が明らかになるにつれ、新型コロナウイルスの存在と影響を次第に無視できなくなった。
極めつけが、3月25日に行われた東京都の小池百合子知事による記者会見だった。
「NO!! 3密 3つの密を避けて行動を」
3密とは小池百合子さんが創作したように思われている。しかし、3月18日の首相官邸の公式Twitterには
1.換気の悪い密閉空間
2.多数が集まる密集場所
3.間近で会話や発声をする密接場面
を避けて外出するように記載されている。小池都知事はさすがテレビの元ニュースキャスターである。これを標語にしてボードとして掲げたことで、一気に市民権を得ることに成功した。
このボードに苦り切ったのが不動産業界だった。なぜなら「密閉」「密集」「密接」の3密は不動産ビジネスの根源だったからだ。不動産は市民生活のインフラだ。これまで、都心部では人が効率的に集まって住めるようにマンションという「密閉」された建物に住民を「密集」させてきた。超高層ビルを建設してテナントを「密集」させ、正社員も非正規社員もグループ会社社員までみんなが「密閉」「密接」になって仕事することが労働生産性を向上させると喧伝してきた。オフィス内の会議室では社員たちが「密集」して「密接」な議論を繰り返した。彼らが展開する大型商業施設には、週末になれば大勢のお客さんが「密集」し、飲食店で「密接」に会話してもらうことが幸せの提供だった。