「理由としては、客観的なものですが、当時のSNS事情なんですが、弱っている人に対して、犯罪をしてしまう、騙すことができる環境ができあがっていたので、次々と犯行ができました」

 神奈川県座間市内のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗や強制性交殺人などの疑いで起訴された白石隆浩被告(30)に対して、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)は、死刑を言い渡した。冒頭の言葉は、2020年11月25日の最後の被告人質問で、裁判官から「なぜ自分がこのような事件を起こしたと思うか?」との問いかけに答えたものだ。

白石隆浩被告 ©文藝春秋

「50~60万円。天秤にかけたとしてどうなのかな?」と自問

 この裁判では、白石被告は、犯行動機について「女性のヒモになれるか、ヒモになれないなら失神させてレイプし、殺害する」と述べていた。加えて、所持金を奪うことも目的だったと話していた。被害者は10代と20代で、なかには高校生や大学生、無職の人もいた。ヒモになりたいならば、なぜこうした経済状況の人を選んだのかがはっきりしない。

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 6人目の被害者女子高生のFさん(当時17)に対して、白石被告は「ヒモになって、定期的にお金を引っ張ってもいいかなと思っていました。寝ることがなければ、帰るように説得していたかもしれません」と答えている。つまりは、女子高生のヒモになろうとしたという。一般的な感覚からすれば、女子高生が当時27歳の男を養うとは考えにくい。しかも月額で5000円。ヒモになるのに、そのくらいの額でいいと思えるのは不思議だ。

白石被告の裁判が行われている東京地裁立川支部 ©渋井哲也

 所持金を奪う目的もあったと言い、1人目の被害者Aさん(当時21)からはアパートの賃貸借契約に必要な額を含む51万円を借り、残額36万円の返済を免れるために殺害した後に所持金数万円も奪った。Bさん(当時15)からは所持金数千円、Cさん(当時20歳)からは所持金数千円、Dさん(当時19)からは所持金数百円、Eさん(当時26)からは所持金数千円、Fさんからは所持金数千円。Gさん(当時17)からは所持金数万円、アルバイトのHさん(当時25)からは所持金数百円、Iさん(当時23)からは所持金数百円をそれぞれ奪った。

 総額60万円にも満たない。そんな額のために、殺人を犯したのか。筆者との面会でも「殺害して入手できたのは50~60万円。(殺害のリスクと)天秤にかけたとしてどうなのかな?」と自問していたほどだ。所持金を奪って「生活費として使った」と法廷で述べていたが、説得力にかける気もする。