100問以上も「黙秘します」と答えていた
筆者も含めて、傍聴人の中には、事件の背景が解明されたとは言い難いために、釈然としない感情が残っている。白石被告は弁護側の質問に対して、100問以上も「黙秘します」と答えていた。たとえば、以下の質問に答えていない。
「Aさんと一緒に住もうという話になったということなんですが、平成29年8月17日朝7時45分、Aさんは、電車で相武台へ来たのですか?」
「2人で幸せに暮らすという認識なんですか?」
「8月18日午後5時9分、相模大野駅近くのコンビニへ行っていますよね。その後、ガムテープとロープを購入した記録があるが、Aさんと一緒に買いに行った?」
「片瀬江ノ島駅で携帯電話を海に捨てるという指示をしているが、自分から提案した?」
「片瀬江ノ島駅付近には、Aさんが友人と自殺を図り、友人だけが亡くなった場所があります。Aさんからその話を聞いていた?」
「携帯電話を捨てた後、白石さんと生活するはずだったとすると、Aさんは新しい携帯電話が必要ですよね。捨てた後のことについて、白石さんは何か言いましたか?」
「片瀬江ノ島駅に捨てるように指示したのは、ICカード、携帯電話、身分証、財布でしたね? アパートに戻った後、財布を捨てたのは確認した?」
「Bさんに、財布は捨てるけど、お金は持って帰るようにと指示した?」
「Bさんに失踪を勧めたということですが、失踪することについてほんとにうまくいくのか、という質問をBさんから受けませんでしたか?」
「失踪すると親や警察から連絡が来るようになることを心配していますと言われませんでしたか?」
これらの質問への答えは不明だが、「言いたいことはすべて言った」「(これ以上、言いたいことは)ありません」などと白石被告は言っている。判決では、「捜査段階から罪を認め、公判廷でも記憶の限り素直に供述」としている。たしかに、そうした姿勢はあったが、弁護側の多くの質問に答えていないことで、明らかになっていない部分も多い。