見た目のインパクトを別として、「語りがいのある間取り」はたくさんある。ほんの小さなワンルームや、当たり前のような郊外の戸建て物件であっても、探せば1か所くらい「変なところ」が見つかる。

 また、その理由を突き詰めていくと「なるほど」と思う答えに行き当たることがあるし、ナゾのままに終わることもある。それこそが「間取り趣味」の楽しさだろう。

 そこで今回は、前回掲載したものとはまた別の間取り図3点について、ふたたび好き勝手に語っていきたい。

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※本稿中での物件は、2018年にダイアプレスより刊行された『事故物件vs特殊物件 こんな間取りはイヤだ⁉』の第1章にて紹介したものです。間取りの図版は、同書に掲載したものと同一のデータを利用しています。

40畳「収納だらけ」のワンルーム@渋谷区

 

 近頃はインフルエンサーの影響で、「断捨離」や「ミニマリズム」といったライフスタイルも流行っているが、我々一般庶民にとって住まいの悩みといえば収納である。

 そんな悩みも立ちどころに解決する間取り図がこちら。壁一面を埋め尽くすのが収納・収納・収納という大盤振る舞い。これだけ収納が多いとなると、入れ尽くすのも一苦労といったところだ。

 もっともこれは「一般家庭向け」の物件ではなく、3人から10人程度が勤務するオフィス用途を想定していると考えられる。これだけの収納空間が必要だとすると、想定業種は弁護士などの士業か、モノの撮影をよくする雑誌の編集部あたりになるだろう。

 壁際には何も置けないけれど、中央に人数分のOAデスクを配置して周囲を回遊空間とすれば、すべての収納を活用することができる。パーティションなどを用いて、間取り図の右半分を「社長室」にしてしまうのもアリだ。ただし空調は「収納内にエアコンあり」となっており、座席によって効きにムラが出そうなのが惜しいところだが。

写真はイメージです ©iStock.com

 相当に稼ぎの良い自営業者ならば、事務所兼住宅としてこの部屋を借りることができるかもしれない。これだけの収納があれば、コレクションした品物や大量の蔵書も問題なく保管できる。さらに空きスペースに本棚を並べれば、小さな町の図書館を越えるくらいの贅沢な書庫を私有できる。

 もちろんそれは「絵に描いた餅」に過ぎないのだけれど、そもそも「間取り図を眺める趣味」というのはそういうものなので、ご容赦願いたい。