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敷き詰められた砂利、全方位がガラス張り…アバンギャルドすぎる部屋@三鷹
外から眺めても「ナゾの家」、立ち入ればもっと「ナゾの家」。マニアの間で有名な物件が、東京都三鷹市に所在する「三鷹天命反転住宅」だ。
「死なないための」「In Memory of Helen Keller ~ヘレン・ケラーのために~」というコンセプトも謳われており、強い理想主義を背景にした実験的な建築である。完成は2005年で、岐阜県のテーマパーク「養老天命反転地」でも知られる荒川修作とマドリン・ギンズの手による。
2次元の間取り図では円形と正方形の組み合わせになっているが、実際の建物は円柱と立方体によってできていてなお不思議。借りて住むことができるほか、見学やショートステイにも対応しているので、気軽に「天命反転」を経験することが可能だ。
中央にある空間はダイニング・キッチン。「炊事の場所」「食事の場所」を平面の中心に据えたのも、荒川の思想の体現だろうか。原色が多用されていることもあり、昔懐かしい子ども番組のセットのようにも見える。
置き畳の部屋には砂利が敷き詰められており、欧米人の東洋趣味に似たものも感じる。また、プライバシーを捨て去るかのように、全方位がガラス張りになっているのも特徴的だ。まるで「生活を見せるため」と言わんばかりで、常識破りである。
そんな開放感の極致ともいえるものが、仕切りのないシャワールームと便所だ。この部屋で誰かと暮らすためには、排泄や入浴という、生々しい「生」の一部も受け止めなければならない。
なお、掲載した間取りはこの住宅の「一例」であり、部屋ごとに様々な差異がある。生活や人生が様々であるように、部屋も様々なのだ。