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伊香保温泉に戻ってみると…
私は再び伊香保を訪ねた。外人通りを改めて見たいと思ったことと、エーが働いていた店の場所を確認しておきたかったのだ。その店は、すでに潰れたようで郵便物がドアに挟まり、闇に沈んだままだった。
数軒の店は以前と同じように、明かりがついていて、1軒の店には浴衣姿の客が2人、笑い声が外まで聞こえてきた。何だかほっとする光景だった。
かつて外人通りに200人の娼婦がいたという時代は遠い昔となった。今やその様子を想像することは難しい。店の外まで客を追いかけて来るような娼婦もいない。売春を強要されるようなホステスもいない。まだ客と寝る女はいるのかもしれないが、それはどこの飲み屋街にもいることだろう。
これまで様々トラブルが起き、血が流れたかもしれない。時には心に大きな傷を受けた女も男もいただろう。悲しみや喜び、人間の欲や情念がないまぜとなり、この山里の温泉地には巨大な炎が灯っていた。それも今は、吹きすさぶ風に揺れるロウソクのか細い火のように静かに消えつつある。灯が消えかけた色街を歩くのは、物悲しい気分になる。
心から思うのは、このネオンが消えず、下心を持った私のような男たちと、異国の女たちがグラスを傾け合う街としてこれからも残って欲しいということだ。
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