今年のM-1の意志。
それは漫才の「破壊」なのだと思った。
そもそも敗者復活組を除くファイナリストの顔ぶれが、それを物語っていた。M-1の王道は、第1回大会の覇者が中川家であることからも明らかなように、関西系のしゃべくり漫才だ。しかし、今大会、そのカテゴリーに入るのは見取り図の1組だけだった。
それとは対照的にいつもの大会なら1組、多くても2組程度の一風変わったスタイルのコンビが目白押しだった。その代表格がマヂカルラブリー、おいでやすこが、錦鯉の3組だった。
例年にはない「変わったスタイル」の漫才が増えた
彼らは、とにかく色が強い。どんな水槽の水も、彼らが色を落とした瞬間に、彼らの色に染まってしまう。
したがって、どんなに繊細で、巧緻な色の漫才を披露したところで、彼らが前に出ていたら、その色を変えられないし、後でも、彼らの色にかき消されてしまうのではないかと思った。
昨年、ミルクボーイが史上最高得点を叩き出して優勝したことで、M-1史における関西系のしゃべくり漫才は1つの頂点を極めたと言っていい。
成長とは、結局のところ、スクラップ・アンド・ビルドだ。
M-1が今後、さらなる発展を遂げるために、M-1は、いったん破壊されることを望んでいるのではないかと思った。
マヂカルラブリーの優勝は「革命」
果たして、結果は、ボケ役がほとんどしゃべらないスタイルのマヂカルラブリーが優勝した。「破壊系」の中でも、最右翼と言っていいコンビだ。
従来の漫才のメインは、あくまで会話だ。もちろん、表情や動きで笑わせることもあるが、それはあくまで補助のはずだった。ところが、マヂカルラブリーは、その役割が完全に逆転していた。動きがメインで、村上のツッコミが補助なのだ。
おそらくM-1史上、最大の破壊であり、最大の革命だと言っていいかもしれない。