「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動・行動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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ストーカー疑惑と襲撃予告
日の光の当たらない収容所のようなコールセンターで働きはじめて数カ月、私は、自分が囚人のような気持ちになりはじめていた……。そして、実際に、お客さまからも犯罪者よばわりされることも多いのが、この仕事だった。
督促の仕事をしていると目の前に色んな障害が立ちふさがってくる。中でも意外と難しいのが、契約のあるご本人よりも、契約者さまの前にそびえたつ「家族」という壁だったりする。
ある日、いつものように延滞しているお客さまの自宅に督促の電話をかけた時のこと。
「だからアンタはどこの誰かって聞いてるのよぉ――!?」
受話器越しでも伝わってくる相手の剣幕に、私は思わず「ひぃ」と小さく悲鳴をあげた。
時間は夜の8時過ぎ、この時間ならサラリーマンで、会社勤めをしているお客さまも帰宅している可能性が高いので、私は自宅の固定電話にターゲットを定めて督促の電話をかけていた。
けれどそこで電話に出たのは、契約者の奥様。
「あの~恐れ入ります、わたくしN本と申しますが、○○さまは御在宅でしょうか?」
「どういったご用件ですか?」
「ええと、○○さまにご確認したいことがありまして……」
「……アンタさぁ、○○とはどういう関係なの?」
不信感が滲む声色に、私は内心(これはまずい……!)と焦る。
クレジットカードやキャッシングは、家族に内緒で利用されているケースがある。契約を結ぶ際には「家族に内緒」「配偶者に内緒」といった項目があり、お客さまがこの項目にチェックした場合は絶対に家族や配偶者に会社名や契約内容を知られてはいけない。
借金をするというのはものすごーく繊細な事柄なので、万が一、家族に内緒でしている借金がばれてしまうと最悪それが原因で離婚!……などということにもなりかねない。