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「直接話そうじゃねぇか!」「もうすぐ着くからな!」督促電話に逆ギレした債務者の“恐怖”の行動

『督促OL 修行日記』より #3

2021/01/10

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

note

会社名を名乗れない苦悩

「ちょっと、何なのよ!? どこかの会社からかけてきてるの!?」

「こ、個人的にお電話をしています……」

 家族に会社名を名乗れないとなれば、個人で電話をかけていることにするしかない。

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 私は早々に「いらっしゃらなければ結構です」と電話を切ろうとした。しかし、その瞬間、受話器越しに相手の鋭い声が突き刺さった。

「さてはアンタ、主人のストーカーでしょ!?」

(えええええ――!!)

 予想外の非難を受けて、私はコーチョクした。

「旦那が携帯に怪しい電話がかかってくるって言ってたけど、自宅にまで電話をかけてくるってどういうことよ!?」

 ああ、それも多分ウチからの督促の電話ですよね……着信に気付いてくれてるなら出てくれればいいのに。そしたら自宅に電話することもないのに。

「ふざけんじゃないわよ!! アンタどこの女なの!?」

「え、ええと――」

(いやマズイ、ここで切ったら私が原因で要らぬ夫婦喧嘩の火種を生んでしまうんじゃないか! なんとかしなきゃ!)

 焦りに焦った私は、奥様に散々罵倒されながらも、なんとかセールスを装い電話を切ることができた。

©iStock.com

(うーん、バレなかったかな……。し、しかし、なんで私がストーカー……。おたくのご主人、そんなにカッコいいんですか……)

 ちょっと見てみたい気もするけど、なんとか気をとりなおして、私は次の電話をかけた。

通報されそうに!?

 今度は、やや高齢の女性の契約者さまの自宅だった。電話口に出たのは契約者の旦那さま。

「怪しいセールスならいらないと言ってるだろう!! 怪しい会社だな! 名を名乗れ!」

(な、名乗れるものなら名乗りたいですよ……でもあなたのご家族が、家族に内緒にしてほしいって希望を出してるんですって~)

「キサマ、さては振り込め詐欺だろう、この詐欺師! 訴えてやる! 訴えてやる!!」

 振り込め詐欺と間違えられてあやうく通報されそうになる。

(今度は詐欺師かー……)

 考えてもみてほしい。自分の身元を名乗らずに、電話を取り次いでもらうって、ものすごく難しくないだろうか。ストーカーだ、振り込め詐欺だと言われても仕方ないかも……。