「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動・行動の数々とは一体どんなものだったのだろう。

現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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そしてついに、爆破予告

 コールセンターにはいたずら電話もよくかかってくる。ある日かかってきた電話を取ると相手は名前も名乗らずイキナリこう言い放った。

「お前の会社に爆弾を送った」

「は……?」

(ばっ、爆弾?) 

 またもやアラートが鳴り響く脳内。私はどう反応してよいのかわからず、その時とっさに出てきた言葉が、

「かっ……、かしこまりました!」

 だった。かしこまってどうするんだよ! 

 こういうお客さまというのは、要するにコールセンターや会社の対応に不満のあるお客さまだから、脅迫めいたことを言われた場合「お客さま、なにかお気にさわることがありましたか?」と対応するのが正解だ。

 今なら完全にいたずらだとわかるけれど、当時の私は爆破予告のたび、びびっていた。

会社に送られてきた怪しい段ボール

 そして、ある日会社に行くと、机の上に大きな怪しい段ボール箱がのっていた。も、もしかして、爆弾……!? ついに来たのか……と、私は身構えた。

「先輩、この段ボールは……」

「ああそれ、お客さまから送られてきたのよ。開けてみていいよ」

 ゴクリと生唾を飲み込んでおそるおそる開けてみると、そこにあったのは緑色の大きな塊。みずみずしいキャベツだった。

(!?)

 段ボールにギュウギュウに詰め込まれたキャベツの上に、一通の手紙が添えられている。

「○○県に住んでいる、××と申します。この度はお支払いが遅れて申し訳ございません。お金がなくお支払いが出来ないので、代金の代わりにうちで採れた野菜をお送りさせていただきます――」

©iStock.com

 要約をすると手紙はこんな内容だった。支払いを延滞している農家のお客さまが、野菜を直接送ってきたのだった。

「……。どうするんですかコレ?」

 スーパーで売っていたキャベツの値段を思い出しながら私は先輩に聞いてみた。みんなで山分けとかするんだろうかと一瞬考えたけれど、先輩は眉間にしわを寄せてキャベツ入り段ボールを見つめた。

「もちろん受け取れないから、送り返すしかないねー」

 そう、どんなに貴重なものや価値のあるものでも、私たちは換金する術を持たないので、お送りいただいたものは返送するしかないのだった。

 キャベツ以外にもコールセンターにはたまにこういった品物、例えば高級そうな海苔やお茶、昆布などが届くことがある。どれも「支払えなくて申し訳ない」という気持ちが伝わってくる。ただ、こちらとしては送り返す送料の分、経費がかかるのでむしろ困るんだけど……。