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債務者の良心を信じたい気持ち
あっけらかんとしたお客さまの様子に、私は膝から崩れ落ちそうになる。
お客さまを信じて待っていても、毎日約束を破られる。仕事の上とはいえ誰かにウソをつかれるのはやっぱり悲しい。
そうしてまた回収できなかった私は、上司にお小言を言われるために呼び出される。
「N本、なんでこんなに期日ギリギリまで待ってるんだ?」
「す、すみません……」
「いや、だからさぁ、この期日は延ばし過ぎでしょ? なんでこんなに待とうと思ったの」
「お、お客さまを……」
「お客さまを?」
「信じてました……」
私の言葉に、上司は心底呆れたような顔をした。
「お客さまを信じたい? それでウソつかれて入金にならなかったんだろ? お前、ホント馬鹿だな。本気で回収しようと思ってない、甘えてるんだよ」
(うっ……。返す言葉もございません……)
でもホントに私はまだどこかで「貸したモノはちゃんと返してくれる」というお客さまの良心を信じたい気持ちがあった。最初っからどうせ返さないだろう、と疑ってかかって交渉をするのはどうしても嫌だと思った。
(私って、ホント回収の仕事、向いてないよなあ……)
今日もまた破られてしまった約束と、一人だけボコンとへこんだ(つまり全然回収できてない)回収成績のグラフを交互に見ながら、私は深々とため息をついた。