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なぜ100年以上も終夜運転が続いているのか

 このように、大みそかから元旦にかけての終夜運転は、もう100年以上の歴史を持っているのだ。これは、そもそもいくつもの鉄道が寺社参詣の便を図ることを目的に建設されたという経緯による。

 もともと、初詣は必ずしも元旦に詣でなければならないものでもなく(今でもそうですけどね)、さらにわざわざ遠方にでかけるのではなく自宅の近くの寺社で済ますのがならわしだった。

日本の正月を変えた「川崎大師ブーム」

 ところが、1872年に日本で初めての鉄道として新橋~横浜間が開業すると、少し離れた遠方の寺社にも行楽を兼ねて出かけられるようになる。そうして最初にブームになったのが川崎大師だ。

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 川崎大師は大量の参詣客であふれるようになり、それに目をつけて鉄道サイドも「初詣は鉄道で」とアピール。すると他の地域でも同様の狙いで鉄道を建設する例が相次いで、すっかり「鉄道に乗ってお正月の初詣」というスタイルが定着していくのだ。

川崎大師 ©iStock.com

 たとえば、京急線のルーツは川崎大師への参詣路線として建設されたのがはじまりだし、今や成田空港アクセス線の趣が強い京成線やJR成田線も成田山新勝寺への参詣客を運ぶために開通した。

 こうして鉄道各社も競い合うようにして自社路線をPR。格安のきっぷを売り出すのはあたりまえとして、終夜運転も初詣客争奪戦の中でのひとつのサービスだったのだろう。

「ルールが整備されていなかった時代」の産物でもある終夜運転

 これ、少し見方を変えれば、鉄道会社にとって初詣客をはじめとする寺社参詣客は大きな収入源であって、それが見込めるならば終夜運転は年末年始限定である必要はないということになる。

明治神宮 元旦初詣 (1966年1月1日) ©AFLO

 実際、戦前までは毎年10月12日の池上本門寺御会式(おえしき)にあわせ、山手線や中央線などが終夜運転を行っていたくらいだ。たくさんの人が乗るならば、喜んで夜通し走ります……。当たり前といえば当たり前の経営方針ではあるが、それもこれも今のように夜中に働かせたら結構高い賃金を払わないとダメですよ、といったルールが整備されていなかった時代だからできたのではないかとも思う。