愛人をお披露目する場となっていたディナーショー
そうして、水谷の許可を得て、カジノツアーのディナーショーで歌手デビューさせたという。それが02年に済州島KALホテルでおこなったイベントだ。北原ミレイが「石狩挽歌」を歌って好評だったが、実は鹿谷あけみの歌手デビューイベントだったわけである。DVDには、くだんの社長があけみの手をとり、大きなケーキにナイフを入れる場面まで収められている。
「つまり、ディナーショーは、水谷側近の織田社長が水谷ファミリーやその関係者へ愛人のお披露目をしたイベントでもありました。もちろん水谷会長も、彼女を気に入っていましたし、歌手デビューさせたのも、会長の一声があったからでした。それ以来、カジノツアーのディナーショーを催すたび、あけみを呼べ、と水谷会長はいい、あけみは還暦の祝いにも駆けつけてます」
とプロデューサー氏。鹿谷あけみは、シングルCDを発売し、そのほとんどを水谷建設の関係者が買い取った。水谷功の還暦祝いでは、松原のぶえといっしょに「真赤な還暦」を歌っている。また、松原のぶえが出演する関西ローカルの番組にも、鹿谷あけみを無理やり押し込んだ。
複雑怪奇な権力構造
水谷ファミリーのメンバーは、水谷建設の幹部だけではなかった。むろん頂点に君臨するのが会長だった水谷功である。前述したように、裏金づくりやその運び役、さらに政官財から暴力団にいたる人脈づくりや裏工作などについて、水谷は社内の幹部に任せない。それらの大役を担ってきたのは、30年来の下請け業者として水谷建設に尽くしてきた建設会社の社長や親しい芸能事務所の社長たちである。いわば彼らが水谷ファミリーの番頭格だ。鹿谷あけみのパトロンになった織田は、水谷の最も信頼する番頭の一人であり、それだけに財力もある。
水谷ファミリーは、変形のピラミッド型組織といえる。水谷功を頂点にし、その下に下請け業者の番頭たちがいて、さらにその下に重機を扱うブローカーやメーカーを配している。水谷建設そのものの幹部たちは、そのピラミッド組織のなかに常時存在しているわけではなく、時折、そこに加わる。たとえば小沢一郎の秘書に裏金を渡したとされる元社長の川村尚は番頭とはいいがたい。水谷のダミー役といったほうが正解だろう。脱税事件で逮捕された財務担当重役の中村重幸などもそれに近い。
そんな水谷ファミリーの頂きに座る水谷功の命令は絶対である。鹿谷あけみはもちろん、パトロンだった下請け業者の織田にとってもそうだ。こうして側近中の側近の愛人になった鹿谷あけみ自身も、水谷ファミリーの一員になる。水谷ファミリーのメンバーの一人が言う。