「事故物件住みます芸人」として、自殺・孤独死・殺人など、かつての住人がそこで命を落とした“曰く付きの部屋”に、これまで12軒も渡り住んできた松原タニシ氏。そんな松原氏のもとには、日常生活の中で奇妙な体験をした人たちから様々なエピソードが寄せられるという。今回は、知人の達樹さんが経験した、ある実話を紹介。達樹さんが「父親の死」の直前に目撃した“奇妙すぎる光景”とは――。
◆ ◆ ◆
「虫の知らせ」という言葉をよく聞く。おじいちゃんが死ぬ前に夢に出てきたり、何故か普段とは違う行動を取ってしまって、それがのちに訪れる不吉な出来事の予兆となったり……。
いわゆる第六感や霊感による予知能力が、近しい人の死や災難のお知らせとして発動してしまうのが、一般的によく使われる「虫の知らせ」である。
そもそも何故「虫の知らせ」と呼ばれるのか。
8年前に亡くなった父親の“奇妙な行動”
実はその昔、人間の体内には虫が棲んでおり、その虫が意識や感情にさまざまな影響を与えると考えられていた。「虫の居所が悪い」や「腹の虫が治まらない」などの言葉は、この「虫」から来ている。
何故悪い事柄によく「虫」が使われるのかというと、中国の道教では生まれた時から人体に棲む「虫」がその人の行いを常に監視し、人が眠りについた時に体内からそっと抜け出して悪い行いを天帝(天にいる神様)に報告していると考えられていて、そのことに由来している。
この「虫の知らせ」は、怪談話にもよく登場する。しかし、今回紹介する「虫の知らせ」は、僕たちが知っているものとは少し様子が異なるようだ――。
兵庫県に住む達樹さんは、8年前に父親を亡くした。
「親父、亡くなる前に奇妙な行動をしてたんです」
当時、達樹さんの親父さんは余命半年のガン宣告を受けていた。宣告されてからは自宅療養になっていたのだが、毎日寝床を抜け出して何処かに電話をしていたという。