マスクやアルコール除菌グッズが店頭から姿を消した2020年春、その悪役として一気に知名度が上がった“転売ヤー”と呼ばれる人々。転売を生業とする彼らのせいで今年はマスクなどの品薄商品がメルカリやヤフオクに溢れるというケースが急増し、これらオークションサイトに出品されたマスクは定価の10倍以上で取引され、ついには国が法規制に乗り出すまでの騒ぎになった。(全2回の1回目/後編を読む)
今は誰もが転売ヤーになれる時代
しかし実際に転売を生業にしていたA氏は「今は誰もが転売ヤーになれる時代で、むしろ転売ヤーが飽和している」と話す。
「メルカリやヤフオクなど個人間売買のプラットフォームが整備され、世は空前の“転売ブーム”。2020年はたまたまマスクに注目が集まりましたが、人気アーティストのチケットやハイブランドの限定品、人気スニーカーなど、誰もが気軽に転売できる時代です。普通のサラリーマンが、レアなスニーカーやアパレルの抽選に応募するだけしておいて、当たったらメルカリで高値で出品しているケースは無限にある。広く言えばそれも"転売ヤー"ですよね。
ただ、正直最近の転売は市場規模が小さい。マスクでそれなりに稼ぎはしましたが、インターネットが普及していなかった1990年代には、いまとは比較にならない額のお金を動かしていた"転売のレジェンド"がいました」
そう語るA氏自身、90年代に転売で20億円以上を売り上げた"レジェンド"の1人である。細々と転売をしていたA氏に人生の転機が訪れたのは、"ある商品"の国民的流行がきっかけだった。
90年代に転売で20億円以上を売り上げた商品とは
「僕が大儲けした商材は『たまごっち』です。僕たちのころはまだ転売ヤーという言葉はなくて、転売品も"プレミア品"と呼んでましたけど。たまごっちのブームは凄まじくて、まだスマホも普及していない時代なのに、入荷情報があった玩具屋の前には早朝から行列ができていた。人を安く雇って並ばせて大量に購入している知人が、羽振りが良さそうにしていたのが『たまごっち』に手を出すきっかけでした。
地道に店に並ぶより大きく稼ごうとメーカーに直接仕入れを持ちかけましたが、そんな人気商品をメーカーや問屋が卸してくれるわけが無い。しかし、その"抜け道"になったのが韓国でした」