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マスクの転売はたった1日で80万円

 しかしアイドル側も徐々に対策が強化し、2019年6月にチケット不正転売禁止法が施行されると、利益率は大幅に低下した。さらに2020年には、新型コロナウイルスの影響で多くのライブが中止になった(「コンサート中止で3月の収入もゼロ」 新型コロナで“貧困”に苦しむイベントスタッフ、演奏家」)。

 それでも転売ヤーは、時代の流れを見極め、手を替え品を替え利益を生み出していく。それを代表するのが、2020年のマスク転売だろう。マスクの転売をしていた人物は当時こう話していた。(「なぜ『高額マスク』が街中で売られているのか? 転売ヤーが明かす『次は消毒液、コロナ検査キット』」)

めっきりみなくなった都内でのマスク特売。「1枚あたりなんとたったの74円」との貼り紙がされている ©文藝春秋

「マスクの転売は実働1日で100万円以上を売り上げましたね。1日で7000枚のマスクを仕入れ、全て売り切りました。単価はバラバラですが、仕入れ値は合計で大体35万円。売り上げは110万円でした。なので、利益としては80万円弱。僕を含めて3人で動きましたが、丸1日もかかってないことを考えればなかなかの売り上げだと思いますよ」

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ドラッグストアはどこも開店前に行列ができていた(写真はイメージです) ©️iStock.com

転売ヤー同士のネットワーク

 しかしマスクが入荷した店には行列ができ、自分で使う分を入手することすら難しかった時期に、どうやって7000枚ものマスクを購入できたのだろうか。聞いてみると、入手方法は驚くほどシンプルだった。

コロナ禍で品切れが続いたAmazonのFire TV Stickも多くが転売に回った

「車でスーパーやドラッグストアを回って在庫を全部買うという単純な方法でした。どれほど品薄でも、あるところにはあるんですよ。マスクは東北や長野に工場が多いと聞いて、現地の知り合いに買って送ってもらったり、人を派遣したりという感じですね。僕自身は主に仙台付近を回りました。関東近郊でも、千葉県の内陸側は割と在庫が残りがちなスポットでした。転売ヤーのネットワークで『今日あの店に入荷するよ』と情報が回るんですよ」(同前)