指原の発言へのさまざまな反応
指原はこのとき、「もちろん勉強した上でこれを(ツイッターに)書いてる人もたくさんいると思うんですけど、もしかしたら、たった一人の言ってることを信じて書いてる人もいるんじゃないかなと思っちゃいました」とも語っていた。これは今回の件にかぎらず、政治などについて意見する場合には、参照する情報を吟味した上ですべきだという、しごくまっとうな考え方だと思う。
しかし、指原の発言もまたTwitterで賛否両論を呼んだ。なかには、彼女がほかの人から「どう思うんですか」とハッシュタグへの賛同を求められたと先の番組内で明かしていたのを、ある特定の集団から呼びかけを受けたかのように曲解した投稿もあり、今回の動きに否定的な人たちを中心に拡散された。そうかと思えば、検察庁法改正案に反対した人たちからも、彼女は権力にすり寄っているなどと批判的な投稿が散見された。
こうした反応に筆者は違和感を抱いた。憲法では、思想の自由とともに、誰もが自ら判断した上で、良いと信じるところに従って行動する自由(良心の自由)が保障されている。したがって、小泉今日子が検察庁法改正案への抗議に賛同したことも、指原莉乃が考えた末に意見を表明しなかったことも、本来なら平等に尊重されるべきなのだ。それにもかかわらず、指原に対しても、また小泉に対しても、態度を表明した・しなかったこと自体を非難する向きがあったのには、首をひねってしまった。
芸能人の政治発言はタブー?
今回の一件で、もうひとつ気になったことがある。それは、小泉今日子らがアクションを起こしたとき、「政治的発言はタブーとされる芸能人から声が上がった」といった反応をよく見たことだ。しかし、本当に芸能人の政治的発言はタブーなのだろうか? これについて筆者はやや疑っている。少なくとも70~80年代には、芸能人が政治に対し積極的に行動するケースはあったからだ。
1974年6月には参院選を翌月に控え、知識人らが「わたしたちは保革逆転を強く希望し 革新系を支持します」という意見広告を『毎日新聞』に掲載した(※1)。そこで名前を連ねたなかには、テレビ司会者の大橋巨泉、テレビタレントの前田武彦、タレントの中山千夏、俳優の小松方正、女優の田中真理などの芸能人も含まれた(肩書きは広告での記載による)。とりわけ、当時『11PM』や『お笑い頭の体操』などの司会で人気絶頂にあった大橋が名前を連ねたことは特筆される。