今年5月、Twitterで「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを用いて意見を表明するツイートがあいついだ。
検察庁法改正案は、一般の国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる案とセットで提出され、5月8日より衆議院内閣委員会で審議された。そこでは、検察官の定年を63歳から(一般の公務員と同様に)65歳に延ばした上で、次長検事や検事長など幹部については内閣や法務大臣が事情があると認めた場合、特例として定年を最長で3年延長して、ポストを続けられると規定されていた。
時の安倍内閣はこれより前の1月31日、翌月8日に定年が迫っていた東京高等検察庁の黒川弘務検事長(当時)の定年延長を閣議決定した。法解釈を変更しての定年延長に対しては、官邸に近いとされた黒川を検事総長にするためかとの憶測も呼んだ。
そこへ来ての検察庁法改正案は、黒川検事長の定年延長を後付けで正当化するものではないかと批判が上がる。そもそも、改正案は政府による恣意的な人事を可能とし、検察の独立性や三権分立を損ないかねないとの懸念もあった。
くだんのハッシュタグは、そうした批判を表明するために一ユーザーによってつくられ、ツイッターでまたたく間に拡散された。先ごろ発表された「#Twitterトレンド大賞2020」では「コロナ(新型コロナ)」に次ぎ2位にランクインしている。
賛否を生んだ芸能人の‟政治的発言”
ここまで広がったのは、演出家の宮本亞門や俳優の小泉今日子など多くの著名人が賛同したことも大きい。ただ、著名人の行動に対しては賛同ばかりではなかった。なかには、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅが一旦はハッシュタグをつけた投稿をしたものの、ファンのあいだで賛否両論となり、その後、当該のツイートを削除するということも起きた。
結果的に検察庁法改正案は、通常国会が閉会した6月17日、政府・与党により一旦廃案とされた。政府の判断には、ハッシュタグによって示された民意も影響をおよぼしたはずである。
筆者自身は、心情的にはハッシュタグの意見に賛同しながらも、結局、ツイートはしなかった。それはまず、自分がちゃんと問題を理解できているか、いまひとつ自信が持てなかったからだ。
それだけに、タレントの指原莉乃が『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「この件に関して信念が持てるほど勉強できていない」のを理由に、結局ツイートはしなかったと発言するのを聞いたときは、ちょっと気持ちが楽になった。