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自らの過去の経営方針を否定した「全主催試合無料」

 これまでプロスポーツはほとんどの場合、主催者が試合(興行)を開催し、会場に観客を集めることをビジネスのベースとしています。言うまでもなく「入場料収入」が収益の柱の一つです。

 私自身、ベイスターズの球団社長を務めていた時代は、「横浜スタジアムの全試合満員」を目標に掲げ、試合観戦をより楽しいものにするための演出や飲食の充実、スタジアムの快適性向上などの施策に注力しました。それらの取り組みが功を奏し、ハマスタの観客席の稼働率は9割を超えるまでになり、入場料収入も劇的に増加。経営基盤の安定化に大きく寄与しました。

 その私が、ブロンコスで「全主催試合無料」を打ち出したことは、自ら、過去の経営方針を否定したとも言えます。

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 どんなビジネスでも同じですが、事業を取り巻く環境が時とともに変化すれば、経営への向き合い方も変えなければなりません。変化に柔軟に対応できなければ、会社はつぶれてしまいます。

 大資本や大企業は内部留保を含めた体力があります。大手金融機関からの融資の仕組みもととのっていますから、まだまだ頑張れる。また、政府にしてもプロスポーツのリーグにしても、そういった体力勝負で生き残れる規模の大企業、大資本、大クラブの視点に立った生き残り策を採用してしまうのが物事の摂理です。

 

入場料収入が経営の根幹という考え方はもはや「幻想」

 一方で弱小企業、弱小チームは、大企業や大クラブと同じ土俵における我慢比べにつきあっていては到底生き残れません。ビジネスを根本から見つめ直すほどに切羽詰まった状況です。過去に囚われていては生き残れない、淘汰されてしまう、と私は考えています。

 スポーツビジネスにおける「入場料収入は経営の根幹であり、それ無しには成立し得ない」という考え方は、コロナ前までは“常識”だったと言えるでしょう。しかしコロナ禍に見舞われた今、そして完全にリスクがなくならないだろう2021年、その先々を見据えると、この考え方はもはや“幻想”だと考えます。

 2020年の後半、スポーツ界は夏前からの無観客開催から制限付きの有観客試合へと段階を踏んできました。しかし、この冬の感染拡大を受けて、観客の上限数が昨年末に5000人へと絞られ、二転三転している状況です。

 今後も予断を許さない状況が続きますが、もしも年初以降、オリンピックまでの期間で、感染制御がある程度できるようになっていけば、どこかのタイミングで制限が解除され、以前と同じように大勢の観客を迎え入れられるようになるかもしれません。