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プロスポーツの「入場料収入」は幻想? 2021年、試合は『お金を稼ぐ場」ではない

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#7

2021/01/06
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ステイホームでエンタメ受容の様式が変化

 ただし、ステイホームの期間を経て人々の意識の中で大きく変わった部分は必ずある。

 そのことを想定して、すべてを準備しなくてはならない、と考えています。

 一定の年代より上の世代では、いわゆる「密」を避ける行動様式は今後も一定程度は定着していくことが予想されます。

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 また、アーティスト側、アスリート側の行動も変容してきました。プロとして技や芸術を披露する場が、リアル興行ではなく、YouTubeやSNSへと変化していったことで、それぞれが発信力を高めています。

 つまり人々の、スポーツを含むエンタメ受容の様式が変わったのです。

池田純氏

 特に、YouTubeや、その他オンラインコンテンツ配信もそうですが、そういったコンテンツを無料で提供・享受することが以前にも増して普通になった、という点に留意すべきです。

 また、経済状況の悪化により、一般の方々の家計が苦しくなってきていることも無視できません。

 1試合あたり数万単位の観客が集まるプロ野球や、それに次ぐ規模のサッカーJ1などは、今後もしばらくは入場者数および入場料収入をビジネスにおけるKPI(重要業績評価指標)とする考え方をとっていくでしょうし、彼らの場合、当面はそれでいい、と思います。

 しかし、J2、J3といった下部リーグや、Bリーグを含むまだ発展途上の競技となれば話は別です。

“常識”はもはや“幻想”となった

 1試合あたりの観客者数は数千人以下で、ブロンコスが所属するB3となれば1000人にも満たないことがほとんどです。もちろん興行の収支を最低限トントンにすることは大切ですが、会場のキャパシティもあり、入場料収入が伸びる余地は限られています。

 しかも今後、観客者数は伸びるどころか減る可能性が高い。

 こうした中小規模のプロスポーツ団体を取り巻く現在の状況を考慮するとき、入場料収入に拘泥する意味はどこまであるでしょうか。

 今のスポーツ界を見るに、ビッグクラブから地方の小クラブまで十把一絡げに「入場料収入こそが基本」とする従前の“常識”を横並びで追いかけ続けているような印象を受けてしまいます。

 繰り返します。その“常識”はもはや“幻想”なのではないでしょうか。

 その“幻想”を追い求め続けた先に、一体どれだけの果実を得られるでしょうか。このコロナ禍を我慢比べのように辛い時間を過ごした先に何があるのでしょうか。