2010年ごろから言われはじめた「アイドル戦国時代」。その中心はグループアイドルで、ソロアイドルは決して多くなかった。さくら学院を卒業した武藤彩未はあえていばらの道を選び、13年4月からソロで活動を開始する。
作詞に森雪之丞や作曲に本間昭光といった豪華な作家陣を起用したオリジナル曲は、武藤が愛した80年代アイドル楽曲のテイストが取り入れられていた。武藤は確かな歌唱力と表現力、キラキラした笑顔で、まわりの期待に応えてみせた。
しかし15年12月にソロ活動を停止して海外留学に出る。武藤が味わったアイドルの恍惚と葛藤とは――。
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――さくら学院卒業後、ソロデビューにあたって1年以上の準備期間を設けていました。
武藤 その間、80年代の曲を題材に練習したり、立ち振る舞いを完璧にしたくて日本舞踊を改めて習いました。ダンスの先生に「手先まで意識して踊ることが大事」と言われて、日本舞踊で磨くことができるんじゃないかと思ったんです。
――最初のソロライブでは80年代アイドルの曲をカバーしていましたが、本人に寄せようという意識はなかったですか?
武藤 逆に、オリジナルに似せないように意識していました。私のオリジナリティが出ないと意味がないので。
――選曲はご自身で?
武藤 はい。母親に「あの頃、好きだった曲を教えて」と聞くこともありました。
――カバーした曲でとくに印象に残っている曲を教えてください。
武藤 堀ちえみさんの『リ・ボ・ン』はちょっと意地悪な歌詞で、あの曲に出てくる女の子を演じたことは勉強になったかなと思います。
――ライブを重ねるごとにオリジナル曲が少しずつ増えていく、というのはとても戦略的だったと思います。
武藤 オリジナルはライブごとに1曲ずつ披露していって、ファンの方と「武藤彩未」を作っていきました。オリジナル曲に関しては作詞家の方に会わせていただいて、「ここはこういう気持ちで……」と説明を細かく聞いたうえで歌唱に臨みました。
――デビューアルバム『永遠と瞬間』には、森雪之丞さんが作詞した曲も収録されています。
武藤 森さんが作詞した作品は、斉藤由貴さんの『悲しみよこんにちは』といったアイドルの曲はもちろん、アニメ『ドラゴンボール』に使われた曲も好きでした。森さんはレコーディングにも来てくださったり、本当によくしていただきました。