2010年ごろから「アイドル戦国時代」と言われはじめ、ももいろクローバーZや東京女子流、ぱすぽ☆がアイドルライブシーンを盛り上げていた。そのなかで、2010年4月に結成されたさくら学院は、中学3年生の3月で義務教育を終えると同時にグループを卒業することが決められている「成長期限定ユニット」という特殊な形をとっていた。

 さくら学院の初代生徒会長(リーダー)が武藤彩未だ。80年代アイドルを愛し、最近では『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)にも出演した武藤は、父兄(ファン)に見守られながら成長。卒業後は、女優を目指す同期の三吉彩花と松井愛莉とは違う道を選んだ。その道とは、松田聖子のようなソロアイドルだった。

 

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――20年11月に放送された『今夜くらべてみました』の「20代なのに80’sアイドルに憧れる女」に出演されましたが、反響はいかがでしたか?

武藤 ずっと「80年代が好き」と言い続けて、やっと話すことができました。ブレずにやってきてよかったです。SNSでも「はじめまして」の方が増えて、私の曲を聴いてくれる方もいたので、いまでもテレビの影響力って大きいんだなと感じました。

――「80年代アイドル好き」は家庭環境が大きく影響しているそうですが。

武藤 父が調教師という仕事をしている関係上、厩舎の横で育ったので、お馬さん優先の生活を送っていたんです。お馬さんは音に敏感なので、家で騒ぐことができなくて、基本的にテレビをつけることもありませんでした。だから、同世代が聴いているようなリアルタイムで流行っている曲ではなく、家族で出かける時に車の中でかかっている曲や、カラオケで両親が歌ってくれた曲が、自分の好きな音楽になったんです。

曲がシンプルで言葉が胸に届く「80年代のアイドル」

――それが80年代アイドルの曲だったと。なぜ80年代アイドルの曲が耳に心地よかったのでしょうか?

武藤 曲がシンプルな分、ボーカルがしっかり届いて、歌詞も胸に届くんです。いまは心情やメッセージを伝えるような歌詞が多いですけど、当時は作詞家が書いた物語を歌うというか、演じるシンガーという印象があって。いま自分が音楽制作をする時も意識しています。

――現在、武藤さんは作詞もしているんですよね。「心情」より「物語」を重視していますか?

武藤 そこは半々というか。大好きな松本隆先生の歌詞って情景が浮かぶんですよ。いま、どこに、誰がいるのか、鮮明に。私の歌詞も情景をしっかり伝えて、そのうえで気持ちを語っていく作品が多いんです。

――「心情」と「物語」の両方を大切にしているんですね。

武藤 歌詞によく「もしも」という言葉を入れているんですけど、番組の企画で80年代に使われている言葉の3位だったんです。知らずに使っていたので、言葉が体に染みついていたのかなって。他にも、いまは「ボク」「キミ」が多いと思うのですが、私は「わたし」「あなた」にこだわっているんです。