「渋谷公会堂に立ちたいね」
――他のアイドルグループとの対バンはどうでした?
武藤 緊張感はありましたね。同じ楽屋になって他のグループが練習をしはじめると空気がピリッとして(笑)。「私たちもやらなきゃ!」と焦るんです。ただ、そこで「負けられない」と力んでしまうとよくないので、「いつも通りやって、練習してきた成果を出そうね」とメンバーには言いました。
――武藤さんが率先して言うんですか?
武藤 私と彩花ちゃんでしたね。
――他のアイドルとの交流はありましたか?
武藤 ももクロさんは全力のパフォーマンスがすごいなと思ってました。さくら学院を卒業して、高校であーりん(佐々木彩夏)と同じクラスになって仲良くなったんです。
――佐々木彩夏さんも「王道のアイドル」志向なので、武藤さんと似ている部分がありそうです。
武藤 確かにあーりんは“ザ・アイドル”という感じですよね。ただ、私は最初こそ「聖子さんみたいなアイドルになりたい」という気持ちがあったんですけど、自分には違うやり方のほうが合っているんじゃないかという葛藤が生まれて、ソロデビュー後に2年以上の海外留学をしたんです。いまは自分から「アイドルです」と言うんじゃなくて、「アイドル」なのかは観ている人に決めてほしいと思ってます。そのために、シンガーとしても通用するような実力を身につけたいんです。
――さくら学院として大きいハコでライブをしたい気持ちはありましたか?
武藤 在籍していた時はよく「渋谷公会堂に立ちたいね」という話をしていました。初期メンバーで立つことはできなかったんですけど、その後、後輩たちが想いを受け継いでくれて渋谷公会堂でライブをしてくれて。あの時はすごくうれしかったです。
「同期の三吉彩花と松井愛莉は女優の道に進んだけど、私には歌しかない」
――卒業後を見据えて行動していたんですか?
武藤 今後どうするかを考えたのは卒業する直前だったと思います。それまでは「グループの活動をやりきろう」という気持ちが強かったので。卒業が近づいて、事務所の方と進路相談をして。同期の三吉彩花と松井愛莉は女優の道に進んだけど、私には歌しかないと思って「歌で勝負したいです」と伝えたんです。
――女優なら年齢を重ねてもできるし、受け皿もあると思うんです。女優に比べて受け皿の少ないソロアイドルやソロシンガーは厳しい道なのかなと。
武藤 たとえ生き残れる枠が少ないとしても、自分は絶対に歌いたいと思ってました。
――さくら学院は2021年8月31日をもって活動終了することが発表されました。武藤さんは思うことがあるのではないでしょうか。
武藤 ずっと続くものだと思っていたから、最初に聞いた時はすごく寂しかったです。でも逆に、私が卒業した後も8年続いて、さくら学院が10周年を迎えられたことに感謝しかありません。終わってしまう寂しさと、後輩たちがつなげてくれたうれしさの両方があります。いつか卒業生で集まってイベントができたらいいですよね。
写真=川しまゆうこ