1ページ目から読む
2/4ページ目

コロナ慣れと変異株による感染拡大に苦しむ英国

 日本には英国の失敗から是非学んでほしい。英国のイングランドは1月5日から3度目の全国的ロックダウンに入った。2度目のロックダウンを12月2日に解除したばかりだ。しかも、前回行わなかった休校措置も実施することになった。変異株のためだ。

 英国は、夏のバカンス(英国版Go To Travel)後にGo To Eatキャンペーンを実施し、秋に入った9月に一気に感染が拡大。9月21日に科学顧問らは2週間の地域を限定したロックダウンを求めたが、ジョンソン首相は経済を止めない方針でこの要求を拒み、店舗の営業時間短縮や家族以外との会食を禁止するという小手先の対応で濁した。しかし、感染拡大に歯止めがかからず、結局、6週間を経て国全体で2度目のロックダウンに至った。

英国では昨年、店舗の営業時間短縮や家族以外との会食を禁止するという小手先の対応で濁した。しかし、感染拡大に歯止めがかからず、結局、6週間を経て国全体で2度目のロックダウンに至った。写真は仕事の後で帰途に就くロンドンのエッセンシャルワーカー ©iStock

 11月5日から始まった2度目のロックダウンでは、春先に初めて経験したロックダウンに比べ、市民は非常にリラックスした様子であった。一度に集まる人数や屋内会食などは制限されていたが、街に出ることは許されていたし、接触の機会も多々見られ、いわゆる「ロックダウン慣れ」の状況が見受けられた。それでも、クリスマス商戦を前に、足元の経済活動を優先させる誘惑に負けてしまったジョンソン首相は、感染者数が下がり切っていないにもかかわらず、4週間で早々にロックダウンを解除してしまった。

ADVERTISEMENT

 欧州ではクリスマスは特別だ。デパートは人混みでごった返し、クリスマスの準備をする人は市場に殺到した。政府は、行動制限を要請したが、人々の接触は止まらず、さらに、感染力の強い変異株がロンドンなどの英国南部を中心に急速に広がった。ジョンソン首相は、12月23日に実質ロックダウンともいえる行動制限を要請し、クリスマス時期の人々の接触を削減しようとした。それでも感染制御不能な状況に陥っており、最後の切り札であるロックダウンを実施した。

 今の日本の状況は、英国の手痛い失敗の道をなぞっているように思えてならない。いずれも、経済対策を重視し、感染対応が後手に回った。これは政策だけの問題ではない。国民も、コロナ慣れが広がり危機感が共有されずに、警戒感が低下してしまっている。

平日の昼時でも閑散とするロンドンのピカデリーサーカス ©iStock

変異株の恐ろしさ

 本稿の執筆時点において、日本では、新規変異株による新型コロナウイルス患者が水際対策(もしくは空港検疫)を中心に少なからず報告されている。ただし、英国への渡航歴のない感染例の報告もあり、留意すべき事態だ。日本での検査体制や遺伝子解析のキャパシティを考えると、すでに国内に入り込んでいる前提で対応することが重要だ。英国では、9月から変異株による感染者が報告されており、英国から日本へ入るルートが多岐にわたることを踏まえれば、12月25日から開始した水際対策の効果も限定的であろう。根本的な国境管理の強化が望まれる。

 この変異株は極めて厄介だ。感染性が50~70%高いと言われているのみならず、小児での感染の増加も報告されている。現時点で、重症化率や致死率は今までの株と相違ないと考えられているが、安心材料にはならない。新型コロナウイルスを含む感染症の制御においては、感染性が50%増える方が、致死率が50%高くなるよりも被害は甚大なのだ。