1ページ目から読む
3/3ページ目

 設定そのものはオーソドックスだが、「こんなことが2度と起こらないように、リコーダーに毒塗っときました」と平然と語る教師という少々突飛なキャラクターによって展開が飛躍していく。教師に翻弄されつつ、犯人だとバレたくない男子生徒の心情描写が実に滑稽なネタだった。

 2020年3月22日、YouTubeチャンネル「ニューヨーク Official Channel」内のラジオ番組「ニューラジオ」にオフローズが出演した際、メンバー共通で影響を受けた芸人に「さらば青春の光」を挙げている。目を引くアイデアや構成力は、彼らから引き継がれているのかもしれない。

 ここ数年で頭角を現している「ファイヤーサンダー」(ワタナベエンターテインメント)も、関西出身でありながらネタに東京っぽさを感じるコント師だ。この路線に乗り、オフローズが飛躍する可能性も十分ある。今年は「キングオブコント」やネタ番組で彼らの活躍に期待したいところだ。

ADVERTISEMENT

「独特の関係性」持つコンビ、トリオに注目

 ピックアップした2組以外で、今年の『おもしろ荘』で気になったのは、ギャルキャラの漫才を披露した「エルフ」(吉本興業)だ。ギャルの荒川(24)もいいが、何より相方・はる(24)のツッコミがうまかった。間の取り方、声のトーン、話の運びにわざとらしさがなかった。まだ若い世代だけに、今後の活動にも注目していきたい。

エルフ(「ぐるないおもしろ荘2021」公式ウェブサイトより)

『おもしろ荘』は若手の登竜門的な番組だが、今回のメンバーを見ると20代前半~40代と年齢の幅が広くなった。昨年、40代コンビの錦鯉が活躍した影響からだろうか。テレビ局のターゲットが世帯視聴率から個人視聴率へと移ったことで、年齢に対するハードルがグッと低くなったように思う。幅広い世代に対してではなく、若年層をターゲットとした番組作りが主流になったことで、「馴染みのあるタレント」よりも、「フレッシュで個性の強いタレント」を目にする機会が増えた。そこに年齢は関係ない。むしろ、中年の安心感が武器になっている気さえする。今後、若手と併せて遅咲きの芸人を目にする機会も増えそうだ。

 また、『おもしろ荘』で2位となった「フタリシズカ」(ワタナベエンターテインメント)のように、「相方に好意を寄せる男女コンビ」といった特徴のあるグループも珍しくなくなるかもしれない。

フタリシズカ(「ぐるないおもしろ荘2021」公式ウェブサイトより)

 人気ドラマやアニメ・漫画でも、長く支持される作品の主要人物には必ず、“ひょんなきっかけで同居することになった男女”や“闇の組織に人生を狂わされた兄妹”など「独特の関係性」があるものだ。近年は、コンビ仲の良い芸人が評価される傾向があるが、それだけではなく、個性的な関係を持ったコンビやトリオが注目を浴びるに違いない。

 今年はどの芸人がどんな笑いを見せてくれるのか。依然としてコロナ禍は続いているが、暗い空気を絶ち切ってくれるような新たなスターが生まれることを切に願いたい。

 1月10日(日)21時から放送するYouTube「文春オンラインTV」では、筆者の鈴木旭氏が出演。「おもしろ荘」に出演したダイヤモンド、オフローズら、今年活躍が期待される芸人について解説する。