写真で磨かれた思考の整理とコミュニケーション力
彼女たちと話をしていて強く感じたのが、その「言語化能力」の高さだ。
こちらの質問の意図を汲み、それに的確な答えを返す能力が高校生離れしている。年の離れた初対面の人間の質問に対しても、答えが非常に端的で、かつ他の人との差別化もできていた。
実はこういった力は、社会に出てから最も大切な力のひとつではないか。
生きていく以上は多くの人とコミュニケーションを取る必要がある。そして、その幅は学校という枠を出れば、良くも悪くも加速度的に広がってしまう。そういった中で、普段は会わないような層の人間ともコミュニケーションを円滑に行えるというのは、大きな武器だ。
そして、彼女たちのそういった力の源こそ、まさに写真部での活動なのだろう。
「何を撮るのか。それをどう表現するのか」を日々考え、被写体を取捨選択するということは、物事に優先順位をつけ、自分の思考を整理することでもある。
また、実際に人を撮影するには、老若男女に関わらず知らない人たちとコミュニケーションしなければならない。写真甲子園に出ることにでもなれば、それこそ短時間で被写体との心的距離を詰め、ストーリーのある写真を撮る必要が出る。そこにグッと一歩踏み込む力を、彼女たちは日々の部活動で鍛え上げられているのである。
“強豪”写真部である理由とは?
顧問を務める恵納教諭は、「コンテストだけを目標にしているわけではない。それはあくまでいい写真を撮ることの副産物」と言っていた。だが、彼女たちとの何気ない会話の中に見えてきたそんなところに、全国の頂点に立つ写真部のすごさを感じた気がした。
多くの人がふっと頭に浮かべるような強豪運動部の日常とは、少し違うのかもしれない。
でも、ファインダーから新しい世界をのぞき込む日々は、きっと未来の彼女たちに大きな力を与えているのだ。
撮影=松本輝一/文藝春秋
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