「元SMAP3人のTV出演に圧力の疑い ジャニーズ事務所を注意 公正取引委」

 2019年7月17日、NHKが報じたスクープが世の中をざわつかせた。事務所から独立した芸能人が「干される」状況をめぐって、公正取引委員会が「注意」したという。これを指揮したのが、2013年から公正取引委員会の委員長を務めていた杉本和行氏だった。

 どのような意図があったのか。2020年9月に公取委員長を退任した杉本氏に聞いた。(全2回の1回め/後編を読む)

ADVERTISEMENT

杉本和行氏

2019年7月公表の“ジャニーズ事務所に対する注意処分”

――2013年3月から、7年半にわたって公正取引委員会委員長を務められました。その中で世間をざわめかせた取り組みの一つに、2019年7月に公表されたジャニーズ事務所に対する「注意処分」がありました。

杉本 ジャニーズ事務所がテレビ局に対し、退所した3人のメンバーを出演させないよう圧力をかけた場合は独占禁止法に触れるおそれがありますよ、という注意処分でした。これは公取が芸能プロダクション側、テレビ局側の双方を調査して、独禁法違反とするまでの確定した証拠までは得られなかったが、いろんなことを総合すると独禁法違反につながり得る行為があると判断した結果です。

――2016年の「SMAP解散騒動」を経ての動きだと思いますが、外からの通報があったりしたんですか?

杉本 具体的にどういう通報があったとは申し上げられませんけれども、世の中の声に絶えず耳を傾けていました。

ジャニーズ事務所から独立した「新しい地図」の3人 ©️文藝春秋

ジャニーズ事務所が「独禁法違反の可能性あり」とされた理由

――あらためてお聞きしますが、なぜジャニーズ事務所は独禁法違反のおそれがあるとされたんでしょうか。

杉本 「優越的地位の濫用」のおそれがあるからですね。例えばの話ですが「脱退したメンバーを番組に出演させたら、もうあなたの局には所属タレントを出しませんよ」と事務所が圧力をかけたとすると、事務所を独立した芸能人の方は自由な活動ができなくなります。これはマーケットパワーの強い事務所が、新規参入の事務所、あるいは個人の活動を制限する行為ですよね。つまり、市場において優越的地位にあるものが、自由な競争を阻害する行為となる。独禁法は独占することを禁じる、すなわち市場における公正で自由な競争を守るための法律ですから、こうした圧力行為があるとすれば処分の対象になるというわけです。